研究課題/領域番号 |
17H03425
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
山中 晃徳 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50542198)
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研究分担者 |
渡邊 育夢 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主任研究員 (20535992)
桑原 利彦 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 卓越教授 (60195609)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 機械学習 / データ同化 / 結晶塑性有限要素法 / 成形シミュレーション / フェーズフィールド法 / 集合組織 |
研究実績の概要 |
平成30年度当初の研究計画では、(1)結晶塑性有限要素法による圧延加工シミュレーションとフェーズフィールド法を組み合わせた集合組織予測手法の検討と(2)ニューラルネットワーク(機械学習)を用いて集合組織情報から降伏曲面(または等塑性仕事面)を予測する方法を構築することを目標に掲げた。 平成31年3月末現在の実績として、(1)の進捗は当初計画より遅れており、結晶塑性有限要素法による圧延加工シミュレーション方法の構築が遅延している状況にある。一方で、フェーズフィールド法による再結晶粒成長シミュレーションについては、ベイズの定理に基づくデータ同化と融合した新しい計算手法を確立し、国際会議(MMM2018)において口頭発表を行った。一方で、(2)の進捗は当初計画通り、もしくは当初計画以上の成果を得た。平成29年度の研究で構築した仮想集合組織生成アルゴリズムを活用して、大量の集合組織データを生成することが可能となり、そのデータを入力値とした結晶塑性有限要素法によるアルミニウム合金の二軸引張変形シミュレーション(数値二軸引張試験)を行うことで、ニューラルネットワークの学習データを蓄積することを可能とした。この学習データで訓練したニューラルネットワークを用いることで、アルミニウム合金の代表的な集合組織であるS方位とCube方位を主成分とする任意の集合組織データから等塑性仕事面を高速に推定することを実現した。また、この成果に基づきインターネット上で同じ推定が可能なwebアプリケーションも開発した。これらの研究成果は、国際会議(MMM2018)においてポスター発表し、Best Poster Awardを受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本科研費研究の応募申請時の最終目標とその特徴は、「機械学習を活用した高精度成形シミュレーションの確立とその適用限界を明らかにする」ことであった。これは現段階でも変わらずに研究を遂行しているところである。平成31年3月時点での全体としての進捗は、おおよそ当初計画通りである。上記したように、結晶塑性有限要素法とフェーズフィールド法を組み合わせた再結晶組織予測は、やや遅延している。一方で、機械学習による高精度成形シミュレーションの確立は、順調に進捗している。特に、上記のニューラルネットワークと深層学習を用いた等塑性仕事面の予測手法の構築は、成形シミュレーションの高精度化に不可欠な高精度材料モデリングに必須のデータを高速に推定できるという点で、国際会議での受賞に表れているように、客観的に見ても興味深い研究成果と考える。しかしながら、本研究の最終目標を達成するには、「機械学習を活用して、如何に成形シミュレーションの高精度化に繋げるか」、そして「その研究成果をどのように社会に還元するか」が重要であり、次年度(最終年度)の研究課題である。これらの研究課題の解決方策は、下記に記す。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、平成31年度の交付申請書に記載した通りである。まず、実用のアルミニウム合金の成形シミュレーションを高精度化するに資するデータを提供できるようにするために、(1)ニューラルネットワークを用いて様々な種類のアルミニウム合金の集合組織から応力ひずみ曲線を推定可能とする。そのために、平成30年度までに対応したCube方位、S方位のみならず、Goss、Copper、Brassなどの集合組織データを生成可能なアルゴリズムに拡張する。また、多種多様な集合組織データに対して、数値二軸引張試験を実施し、ニューラルネットワークの訓練に用いる学習データを蓄積する。さらに、蓄積した学習データを用いたニューラルネットワークの再学習を行い、任意の集合組織データから応力ひずみ曲線と等塑性仕事面を予測できるか検証する。さらに平成31年度は、Marciniak-Kuczynski解析による成形限界解析を行い、その結果を学習することで、集合組織データから成形限界まで高速に推定する手法を開発する。これと並行して、実験データをニューラルネットワークの学習データとするための材料試験機の開発も行う。開発した試験機で実験データの蓄積、ニューラルネットワークの再学習を行い、応力ひずみ曲線の推定精度向上を目指す。また、(2)前年度に実施したデータ同化とマルチフェーズフィールド法を融合した再結晶組織予測手法を一般に普及させる方法としてオープンソースコードを開発し、web公開することを計画する。
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