研究課題/領域番号 |
17H03426
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
伊藤 暁彦 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (20451635)
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研究分担者 |
吉川 彰 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (50292264)
後藤 孝 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (60125549)
鎌田 圭 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 准教授 (60639649)
且井 宏和 東北大学, 金属材料研究所, 特任准教授 (70610202)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 化学気相析出 / 自己組織化 / セラミックス / コーティング / 配向制御 |
研究実績の概要 |
一般に、共晶成長は、液相からの溶融凝固過程において観察される。本研究課題では、この先入観を覆し、気相からの共晶成長を利用する。この目的を達成するために、申請者が独自に発展させてきた高強度レーザー反応場での高速化学気相析出法を用いる。具体的には、高活性・高過飽和度の極限成膜雰囲気において、Al2O3系共晶セラミックスを高速化学気相析出させる。これは、従来の溶融法を用いた共晶組織の形成手法とは異なる、新しい着想による気相からの高次ナノ構造体のコーティングプロセスである。 本年度は、Al2O3-HfO2系ナノ複合膜から研究に着手した。出発原料には、AlおよびHfのアセチルアセトン錯体を用いた。これらの化合物粉末を各原料炉内に設置し、原料炉内温度を変化させることで、原料気化量を制御した。基板には、多結晶AlN板および単結晶Al2O3板を用いた。半導体レーザー (波長976 nm; 最大出力170 W) を用いて、成膜を行った。合成した膜は、X線回折を用いて相同定を行い、走査型電子顕微鏡を用いて組織観察を行った。 Al2O3-HfO2系ナノ複合膜の断面BSE-SEM像より、Al2O3-HfO2膜は柱状に成長しており、α-Al2O3柱状晶の内部に、m-またはt-HfO2がラメラ状もしくはロッド状に同時成長している様子が認められた。Al2O3-HfO2系ナノ複合膜の表面にも、共晶様組織が観察された。ラメラ層間は40-50 nmであり、溶融凝固法により形成したラメラ組織の値 (200-250 nm) より微細であった。ナノ複合膜の成膜速度は最大で300 μm h-1に達した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Al2O3-HfO2共晶系の化学気相析出において、α-Al2O3柱状晶の内部に、m-またはt-HfO2がラメラ状もしくはロッド状に同時成長している様子が認められている。合成条件 (仕込み組成、成膜温度、炉内圧力) を様々に変えてAl2O3-HfO2系ナノ複合膜を合成しても、同様のナノ複合組織が得られている。これは、申請者らが提案する従来の溶融法を用いた共晶組織の形成手法とは異なる、新しい着想による気相からの高次ナノ構造体のコーティングプロセスが実現できることを強く示唆している実験結果である。以上の実験結果から、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
Al2O3-HfO2共晶系の化学気相析出において、特異なナノ構造の形成を確認している。申請者が提案する気相からの高次ナノ構造体のコーティングプロセスを実現するためには、気相法による共晶成長を理解する必要があり、さらなる知見の集積が必須である。次年度は、いよいよAl2O3-Lu2O3系に研究を展開する。Al2O3-Lu2O3 系には、ガーネット型Lu3Al5O12 (LuAG) やペロブスカイト型LuAlO3 (LuAP) が存在し、それぞれの化合物の間に共晶点がある。まずは、α-Al2O3-LuAG系の共晶組成条件を中心に研究を推進していく計画である。
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