研究課題/領域番号 |
17H03428
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浜 孝之 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (10386633)
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研究分担者 |
高村 正人 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 上級研究員 (00525595)
宅田 裕彦 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (20135528)
袴田 昌高 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (30462849)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 結晶塑性有限要素法 / 加工硬化挙動 / 時間依存変形 / 板材成形 |
研究実績の概要 |
平成29年度は主として,供試材の基礎的な材料特性の取得とこれまで開発を進めてきた結晶塑性解析プログラムの時間依存変形への適用可能性の検討を行った.具体的な内容を箇条書きで示す. (1)解析との定量的な比較に資する高精度な実験結果を得るため,デジタル画像相関法による3次元変位・変形解析システムを新たに整備した.整備したシステムを活用して,工業用純チタン板(六方最密金属),5000系アルミニウム合金板(面心立方金属),IF鋼板(体心立方金属)などを対象として単軸引張/圧縮試験,反転負荷試験,二軸引張試験,応力緩和試験,クリープ試験等を行い,基礎となる実験データを取得した. (2)申請者らがこれまで開発を進めてきた結晶塑性解析プログラムでは,ひずみ速度依存性を考慮した定式化が採用されている.そこで,現状のプログラムで時間依存変形をどこまで記述可能かを調査した.具体的には,IF鋼板を対象として解析により加工硬化挙動のひずみ速度依存性や応力緩和挙動などの再現を試みた.その結果,ひずみ速度依存性指数を適切に設定することで加工硬化挙動のひずみ速度依存性を良好に再現することができた.一方,応力緩和挙動については,ひずみ速度の影響などを定性的に再現することができたが,定量的にはずれが見られた.このことから,定量的な精度向上を目指すためには,新たなモデルの導入が必要なことが示唆された. (3)分子動力学解析から得られる知見を結晶塑性モデルへ有機的に反映させるための方法論を考察した.その結果,例えば六方最密金属である純チタン板では転位と双晶でのひずみ速度依存性の違いを解析上で適切に考慮する必要があり,分子動力学解析の結果をそのモデル化に有効活用できる可能性があることが見出された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度当初の研究実施計画で挙げた,(1)実験設備を整備し,各供試材の基礎的な材料特性を取得する,(2)現状の結晶塑性解析プログラムの時間依存変形への適用可能性を調査する,(3)分子動力学解析の有機的な活用方法を検討する,という項目を順調に遂行できた.以上の結果を総合的に鑑みて,【おおむね順調に進展している】と判定した.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究が順調に進展していることから,平成30年度も当初の予定通りに研究を推進する所存である.具体的には,以下の項目を実施予定である. (1)六方最密金属である工業用純チタン板では,双晶の活動も塑性変形挙動に大きな影響を及ぼし,また転位と双晶ではひずみ速度依存性が異なることも示唆されている.そこでまず,結晶塑性解析により平成29年度に取得された種々の負荷経路における変形挙動の高精度な予測を目指す.ここでは特に双晶活動の及ぼす影響を調査するため,純度の異なる2種類の工業用純チタン板を用いて研究を行い,高精度なモデル化を目指す.また,工業用純チタン板の時間依存変形についても解析を行い,特に双晶のひずみ速度依存性のモデル化を検討する. (2)本研究課題の目的の一つである,結晶塑性解析を用いた板材成形シミュレーション技術の開発に着手する.具体的には,解析プログラムを以下のように拡張する.①テイラーモデルに基づき,一積分点に複数の結晶方位を埋め込めるように拡張する.それにより,実用的な有限要素数で塑性加工解析を実施できる枠組みを構築する.②工具と被加工材の接触問題を取り扱える新たなアルゴリズムを定式化し,プログラムへ導入する.まずは円筒深絞り成形を対象として,解析の実現を目指す. (3)結晶塑性解析の最大の欠点は,計算速度の問題である.そこで,アルゴリズムの効率化や並列計算の導入など,解析精度と計算時間のバランスを取りつつ計算の高速化に取り組む.それにより,前述の円筒深絞り成形の解析を実用的な時間で実施することを目指す.
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