研究課題/領域番号 |
17H03429
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三宅 正男 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (60361648)
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研究分担者 |
平藤 哲司 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (70208833)
池之上 卓己 京都大学, エネルギー科学研究科, 助教 (00633538)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 電析 / めっき / イオン液体 / 高融点金属 |
研究実績の概要 |
タングステンやイリジウムに代表される高融点金属は、優れた高温耐性・化学的安定性をもつため、様々な工業製品に利用されているが、一方で、加工が困難な材料として知られる。近年、微細形状化のニーズが高まっており、これに対応可能な加工法として、電析法の開発が求められている。しかし、従来の水溶液を用いた室温付近の電析では、クラック(割れ)のない緻密な高融点金属膜を得ることはできない。溶融塩を用いた室温付近の電析では、緻密な膜を形成できるものの、高温による様々な悪影響が避けられない。そこで本研究では、イオン液体を新しい浴として用い、300°C以下の中温度域で電析を行うことで、超高融点金属のクラックフリー膜を電析する技術の確立を目指す。 EMIC-AlCl3 系のイオン液体を溶媒に用い、W6Cl12 をタングステン源とする電析浴からのタングステン電析について検討した。電析電位が低い場合には、Al-W 合金が電析され、電析電位がそれよりも高い場合には、Al を含まず、W を多く含む電析物が得られることが分かった。ただし、W 含有率が高い電析物は酸素も多く含み、金属タングステンではなく、酸化タングステンとして析出していることが推測された。酸素源は、電析浴に不純物として含まれている水分であることが疑われたため、建浴前の試薬から水分をできる限り除去することを試みた。水分除去処理後の試薬を用いて電析を行ったところ、電析物中の酸素は大幅に減少し、金属タングステンが一部電析したことを示唆する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
金属タングステンおよびイリジウムの電析が可能なイオン液体を見つけることを初年度の目標としていたが、達成できていない。
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今後の研究の推進方策 |
タングステン電析については、イオン源からの完全な水分除去が成功の鍵を握ることが明らかとなってきた。これまでの試薬合成法を見直し、新たに、水分が混入する余地がない方法で試薬を合成し、水分を含まない試薬を用いてタングステン電析を試みる。 さらに、様々なイオン液体を検討することで、タングステン電析が可能な電析浴を見出す。 タングステン電析が可能であることが明らかとなった電解浴系において、さらに電析条件を最適化することで、クラックフリーの平滑なタングステン膜を得る電析条件を明らかにする。薄膜形成プロセスにおいて、一般的に、薄膜内部に大きな引張応力が発生すると、膜にクラックが発生することが知られている。そこで、クラックの発生しやすさを定量的に表すために、電析膜の内部応力を X 線回折測定およびラマン分光法によって解析する。本測定によって得られた内部応力の大きさと各電析条件(温度、電析速度など)の関係を明らかにすることで、引張応力が低く、クラックが発生しない電析膜が得られる最適な条件を明らかにする。 タングステンと同様に、イリジウムのクラックフリー膜の電析にも取り組む。単純なイリジウム塩をいくつかのイオン液体に溶解させることを試みたが、いずれもほとんど溶解しなかった。そこで、溶解が可能と思われるイリジウム塩を合成し、合成塩をイオン液体に溶解させることを試みる。その後、イリジウム電析が可能かどうかを調べる。
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