研究課題/領域番号 |
17H03433
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
上路 林太郎 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主幹研究員 (80380145)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 材料加工 / 組織制御 / 格子欠陥 / 構造・機械材料 / 鉄鋼材料 |
研究実績の概要 |
構造用金属材料において成形性を有しつつ強靭化を図ることは、安全性向上や小型化を通じて、環境規制への対応や資源節約を実現する方策であり、工業分野の基本課題である。この課題に対する解決策として、高強度で成形性に優れた金属材料を得るための組織の革新的理想像として、日本刀の造り込みから着想した「日本刀型鋼板」を新たに提案した。ここでは日本刀型鋼板を、「サブミリメートルスケールの層厚さを有する軟質低炭素鋼層と硬質高炭素鋼層からなるサンドイッチ型複合材料」と定義する。日本刀型鋼板の室温引張変形特性における、(i)硬質層体積率の影響、(ii)硬芯材と軟芯材の違いが生じるメカニズムを、特に層界面の塑性拘束効果に注目した実験と数値計算により明らかにし、高強度や延性・成形性を最大化する積層設計指針を獲得することを目的とした。 材料創成として、低炭素鋼と高炭素鋼の、板幅25mm×長さ45mmであり1mmから4mmまでの各種板厚を用いた。板厚中心部に軟質の低炭素鋼を配置し、表層部に硬質の高炭素鋼を添えた軟芯材および逆の配置を有する硬芯材を作製した。高温圧縮はオーステナイト単層高温域で実施したため、また、薄板であり冷却速度は板厚方向に均一であったため、圧縮材の組織は、冷却中の相変態により決まり、高炭素鋼部はマルテンサイト組織を含む硬質組織が形成された。また、一部の試作材では、接合界面に切削によりあらかじめ凹凸を形成させたものも試作した。 実験と有限要素法解析等の結果、これまでに、日本刀型鋼板として強度と成形性を良好なものにするための構造設計指針として、(1)軟質層の体積率は半分より少ない方が強度を得るため、(2)表層に軟質層を配置する構造が成形性を得るために、(3)界面形態は平坦なほうが延性確保のために、それぞれ有利であることが明らかとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画に沿って研究を遂行することができた。界面形態の影響のほか、界面拘束に起因する相変態挙動の変化など、当初の予定になかった新しい知見も取得し発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画に沿って実施するほか、新知見に関してメカニズムを深堀し、その応用も検討する。高炭素鋼層として、昨年度(0.45%C)よりも含有量を増大させた0.65%C鋼を用いる。高炭素鋼と低炭素鋼のサンドイッチ型積層構造を有し、幅25mm×長さ45mmであり1mmから4mmまでの各種板厚を実験に供する。接合体を得るための圧縮条件は昨年度と同様オーステナイト域圧縮を基本とし、ガス急冷により得られるサンプルの組織を光学顕微鏡や背面反射電子線回折図形(EBSD)測定により詳細に明らかにする。また、冷却中の組織変化の詳細を明らかにするために、構成層の個々の炭素鋼の連続冷却変態図(CCT図)を測定し、変態熱や変態ひずみと積層材組織の関係について明らかにする。 さらに、高炭素鋼を中心に配置し、低炭素鋼を表層に配置した幅100mm程度の板材を熱間プレスおよび圧延により試作する。得られた材料の組織と引張変形挙動等を調査し、日本刀型積層構造を利用することにより得られる新規な特性の探求も併せて行う。
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