研究実績の概要 |
(1)パラジウム抽出率の抽出速度依存性に対する希釈剤効果 ジ-n-ヘキシルスルフィド(DHS)による塩酸溶液からのPd(II)抽出速度に対する、希釈剤n-オクタン/1-オクタノールの効果に関しては、DHSと1-オクタノールの濃度比を細かく変化させることで、Pd(II)抽出速度の最小値が生じる条件を調べた。10 mmol/LのDHSによる1 mol/L塩酸溶液からの1 mmol/LのPd(II)抽出において、有機相中の1-オクタノール濃度が100~500 mmol/Lの際に抽出が最も遅くなることが分かった。また、昨年度の懸滴法による界面張力測定において、DHS系ではn-オクタン/1-オクタノール比の影響は受けるもののDHS濃度の影響はほとんどなかったが、今年度行ったN,N,N’,N’-テトラ-2-エチルヘキシル-チオジグリコールアミド(TDGA)系では、1-オクタノールが存在しない溶液においてTDGA濃度依存性が見られた。一方、1-オクタノールが添加された溶液ではTDGA濃度依存性がなく、さらに界面張力の値は1-オクタノール濃度にほとんど影響されなかった。
(2)液―液界面周辺における微視的構造の解明 DHS/ n-オクタン/1-オクタノール-1 mol/L塩酸系における、有機相-水相界面付近の希釈剤等の凝集構造を、SPring-8におけるX線反射率測定及びJ-PARCにおける中性子反射率測定により調べた。X線反射率測定からは、界面の有機相側での水分子濃度と1-オクタノール濃度の関係を、中性子反射率測定では、界面におけるDHS及び1-オクタノール濃度の特異性を明らかにした。
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