研究課題/領域番号 |
17H03441
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
板谷 義紀 岐阜大学, 大学院工学研究科, 教授 (50176278)
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研究分担者 |
小林 信介 岐阜大学, 大学院工学研究科, 准教授 (30345920)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 温熱回収 / 吸収式ヒートポンプ / スラリー / 蓄熱 / 気液界面 / 物質移動 |
研究実績の概要 |
未利用温熱エネルギー回生による徹底した省エネルギー技術開発を目的に,これまでLiBr・水系吸収式ヒートポンプ(AHP)による廃熱回収システムの開発を行っている. 本研究では,LiBr微細結晶スラリーを吸収液に活用することにより,温熱エネルギーを回生し,蒸気と冷熱を同時生成する蓄熱機能を備えた不均相系ハイブリッドAHPシステムを構築することを目的としている.本年度は,1)水蒸気吸収発熱を伴う微細結晶スラリー吸収液の伝熱面上液膜の2次元モデル可視化・流動・伝熱機構の解明および2)LiBr/水系微細結晶スラリーを蓄熱剤とする理論蓄熱密度試算・バッチ式ラボスケール試験装置による蓄熱回収機能の速度論評価,3)スラリーへの水蒸気吸収速度の計測および理論モデル解析,4)蒸気と冷熱を同時生成する蓄熱型ハブリッドAHPシステム装置の設計指針構築を目的に,ラボスケールAHP試験装置の試作を行った.その結果,以下の成果を得た. 1.吸収液表面で水蒸気および水噴霧液滴を吸収する過程での気液界面流動機構を可視化し,スラリーの微細結晶粒子および濁度をトレーサーに代用して流動挙動の動画撮影を行い,その画像解析から気液界面に形成される低濃度層が物質伝達機構に大きく影響を与え,スラリーでは濃度低下を大きく低減させることができることを確認した. 2.微細結晶スラリーを蓄熱剤として活用することを想定して,熱力学的平衡論から蓄熱密度を諸条件で試算し,条件によっては水の蒸発潜熱に相当する蓄熱密度が想定される. 3.バッチ式ラボスケール試験装置による熱回収速度論的評価を実施し,相関関係を検討している段階である. 4.給湯器用熱交換器を入手して,蒸発器と吸収器から構成される多目的ラボスケールAHP試験装置を試作し,蓄熱型ハブリッドAHPシステム評価試験を開始したところである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LiBr微細結晶スラリーへの水蒸気吸収速度を予測するうえで,水蒸気吸収過程での気液界面の移動現象は,界面での微細結晶の溶解,吸収液濃度,平衡状態などに大きな影響を与え,このような場での物質移動機構を定量的に解明しておく必要がある.H30年度は初年度に引く続き,スラリー気液界面の可視化試験およびバッチ式ラボスケール試験装置による蒸気吸収速度論的評価を行った. また,スラリーを蓄熱剤として活用することに着目して,蓄熱密度に与える諸条件の影響を熱力学的に解析するとともに,蒸気と冷熱を同時生成する蓄熱型ハブリッドAHPシステムの設計指針を評価するためのラボスケール試験装置を試作した. 以上の成果より,概ね計画通り研究が進捗したと自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果に基づき,最終年度の目標達成に向けた以下の研究項目を実施し,完遂する予定である. 1)水蒸気吸収発熱を伴う微細結晶スラリー吸収液の伝熱面上液膜の2次元モデル可視化し,流動・物質移動・伝熱機構を解明する. 2)LiBr/水系微細結晶スラリーを蓄熱剤とする理論蓄熱密度試算・バッチ式ラボスケール試験装置による蓄熱効果および熱回収の速度論評価を行う. 3)伝熱管内壁を流下するLiBr/水系微細結晶スラリー液膜の液膜形成挙動・伝熱・蒸気吸収特性を解明するために,フィン付き熱交換器を組み込んだラボスケール吸収器と蒸発器を試作して,スラリーへの水蒸気吸収速度の計測および理論モデル解析を行う.また,蓄熱型ハブリッドAHPシステムラボ試験装置の設計・試作・蒸気と冷熱の同時生成を目的に,同試験装置による各要素試験を実施する. 以上の成果に基づき,ハブリッドAHPシステム性能評価モデリングの構築・最適化を行い,これらの成果から,不均相系温熱アップグレード化システムとして化学工学的に体系化する学理の構築を目指す.
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