研究課題/領域番号 |
17H03442
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松坂 修二 京都大学, 工学研究科, 教授 (10219420)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 粉粒体操作 / 電荷移動 / 帯電 / 粒子 / 運動制御 |
研究実績の概要 |
本研究では,実験,数値計算,理論的考察を行い,外部電場制御方式を基礎として,導体と誘電体を統合する全材料対応型電荷移動モデルを構築するとともに,各種条件下で帯電させた微粒子の状態・運動を制御する応用技術を開発を3年間で実施する。本年度は,粒子の帯電制御,粒子の離脱,浮揚,静電分散の実験を包括できる装置を使用し,大気圧下,減圧下および窒素置換環境下で詳細な実験的検討を実施した。電極に電圧を印加して静電場を形成した結果,電界強度に応じて接触帯電あるいは誘導帯電によって粒子には電荷が付与された。帯電した粒子には重力,ファンデルワールス力,電気影像力,分極力,グレーディエント力,クーロン力が作用するが,力の総和として上向きの力が下向きの力を超えたとき,粒子は離脱・浮揚した。ズームレンズ付高速度カメラを用いて粒子の浮揚現象を録画・再生し,粒子の軌跡と速度をデジタル画像解析によって求めた。粒子の供給は,手動および自動連続の2方式とした。手動供給方式では,平板電極上に粒子層を形成させて,粒子の浮揚過程を解析した。自動連続供給方式では,傾斜振動板を用いて,粒子を跳躍移動させながら静電場に粒子を導き,粒子の分散性を評価した。浮揚粒子は,吸引式ファラデーカップ内の繊維フィルターで捕集し,エレクトロメータで電荷を測定して捕集量から比電荷を求めた。個々の粒子の電荷は,静電場における粒子軌跡の理論解析により求めた。多数の粒子を取り扱うため,自動演算処理システムを構築した。粒子の電荷の推算に必要な静電場は有限要素法を基礎とする3次元数値計算で求め,粒子の運動方程式を基礎として粒子の位置を逐次計算し,粒子の電荷をパラメータとして算出した。鎖状凝集粒子近傍の電界は,粒子の配置および誘電率を考慮して不均一電界を高精度で解析するとともに,粒子の電荷移動の時間経過から帯電様式の違いを評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおりに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
粒子の帯電制御,粒子の離脱,浮揚,静電分散を包括したデータを取得できる装置を使用して,詳細な実験的検討を実施するとともに,外部電場を数値計算し,粒子の挙動を理論的運動解析に基づいて評価する。静電場を形成するために平行平板電極を用い,外部電場の印加によって粒子を帯電させたのち,電極間に形成された平等電界中の粒子の非等速運動をズームレンズ付き高速度カメラで捉える。さらに,上部電極を網状電極とし,その周囲の不平等電界を粒子が通過するときにみられる挙動を詳細に解析する。粒子層から鎖状凝集粒子が形成されて離脱・浮揚する過程においては,粒子近傍の外部電場が粒子層の配列に大きく影響を受けることを想定し,立方格子に加えて最密格子モデルを立てて,有限要素法に基づく三次元数値計算を実施する。粒子の表層から積層内部にわたって詳細な電界強度分布を計算し,粒子の離脱・浮揚における力の均衡を解析する。静電気力は,クーロン力,電気影像力,分極力,グレーディエント力に細分化し,粒子の帯電量は電界強度分布に基づいて粒子の運動軌跡から理論解析で求める。粒子の帯電量と不平等電界分布から粒子にはたらく力を計算し,粒子の凝集・分散に及ぼす粒子径,粒子の電気抵抗,電界強度依存性を評価する。不平等電界中では,並進運動だけでなく,粒子の回転を考慮し,凝集粒子を構成する粒子の帯電量分布を評価する。さらに,粒子に作用する回転から遠心力を求め,凝集粒子に作用する力を求める。粒子の配向,帯電量分布,電場の方向,一次粒子の分極を考慮し,8通りの条件を設定したうえで,粒子の運動に関する統一理論モデルを構築する。本モデルを利用して粒子の位置と回転の時間発展型数値解析プログラムを作成し,実験で得られた動画による検証を行い,帯電粒子の詳細な運動解析技術を確立する。
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