本年度は,粒子の帯電制御,粒子の離脱,浮揚,静電分散を包括したデータを取得できる装置を使用して,実験的検討を実施するとともに,外部電場を数値計算し,粒子の挙動を理論的運動解析に基づいて評価した。静電場を形成するために平行平板電極を用い,外部電場の印加によって粒子を帯電させたのち,電極間に形成された平等電界中の粒子の非等速運動をズームレンズ付き高速度カメラで捉えた。上部電極を網状電極とし,その周囲の不平等電界を粒子が通過するときにみられる挙動を詳細に解析した。粒子層から鎖状凝集粒子が形成されて離脱・浮揚する過程においては,粒子近傍の外部電場が粒子層の配列に大きく影響を受けることを想定し,立方格子に加えて最密格子モデルを立てて,有限要素法に基づく三次元数値計算を実施した。粒子の表層から積層内部にわたって詳細な電界強度分布を計算し,粒子の離脱・浮揚における力の均衡を解析した。静電気力は,クーロン力,電気影像力,分極力,グレーディエント力に細分化し,粒子の帯電量は電界強度分布に基づいて粒子の運動軌跡から理論的に解析して求めた。粒子の帯電量と不平等電界から粒子にはたらく力を計算し,粒子の凝集・分散に及ぼす粒子径,粒子の電気抵抗,電界強度依存性を評価した。不平等電界中では,並進運動だけでなく,粒子の回転を考慮し,凝集粒子を構成する粒子の帯電量分布を評価した。さらに,粒子に作用する回転から遠心力を求め,凝集粒子に作用する力を求めた。粒子の配向,粒子の帯電量分布,静電場の方向,一次粒子の分極を考慮し,8通りの主要条件を設定したうえで,粒子の運動に関する統一理論モデルを構築した。本モデルを利用して粒子の位置と回転の時間発展型数値解析プログラムを作成し,実験で得られた動画による検証を行い,帯電粒子の詳細な運動解析技術を確立した。
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