研究課題/領域番号 |
17H03444
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
吉田 昌弘 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (50315397)
|
研究分担者 |
武井 孝行 鹿児島大学, 工学部, 研究員 (90468059)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ナノカプセル / カプセル化技術 / 自己修復材料 / 金属触媒 / 乳化技術 |
研究実績の概要 |
コア-シェル型カプセルの調製に関して基礎検討を行った。カプセル壁材としてメラミン-ホルムアルデヒド骨格、修復剤としてアクリル系モノマーであるトリメチロールプロパントリメタクリレートを採用した。カプセル調製の前段階のO/Wナノエマルション調製に関しては、乳化操作に伴う液滴径、有機相における修復剤と壁剤の濃度条件、有機相と水相との体積割合、液滴の表面電荷状態などの種々の調製条件を探索した。調製したカプセルに関しては、界面に配向した無水マレイン酸とメチロール化度を変えたメチロール化メラミンの濃度条件、分散特性・粒径分布、粒子表面の電荷状態、表面形態と膜厚、修復剤の含有率・漏れ試験、カプセル外殻の強度等を評価した。さらに、通常、比較的低温域におけるモノマーの重合開始剤としては、アゾ系の重合開始剤である2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)が用いられるが、60℃以上で重合反応が促進する。本提案では、修復剤であるモノマーの重合触媒として活性が高く、効率的な重合性を確保できることが予想される金属触媒(臭化物)を採用した。本自己修復モデルは常温域より少々高い温度での重合反応を目的としているためモデル自己修復材料中に分散させた修復剤入りカプセルと金属触媒が、自己修復能力を発揮する条件も探索した。母材となるエポキシ樹脂中に修復剤内包ナノカプセルと金属触媒の配合割合を変化させたモデル試験片を作成し、ナノカプセルの試験片中への分散状態、ナノカプセル、金属触媒、エポキシ樹脂との配合割合が及ぼす試験片強度(圧縮試験、曲げ試験等)、修復剤の硬化にかかる温度依存性や硬化時間の検討、マイクロクラック進展の微視的観察や評価を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コアシェル型カプセルの調製条件の検討ができ、金属触媒を用いた自己修復モデルに関する知見を蓄積できたため概ね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度までの自己修復を実現するためのカプセルの設計と調製ならびに特性評価、常温域より少々高い温度で自己修復可能な自己修復剤材料の作成と評価については、常温域での自己修復能の成果をフィードバックし、平成30年度以降も適宜最適なナノカプセル調製やモデルとなる自己修復材料の設計に役立てるために引き続き実施する。さらに、応用展開のモデル実験として、航空機や自動車などの産業、建築や橋梁の耐震補強等で使用される炭素繊維強化プラスチック(CFRP,母材は主としてエポキシ樹脂)や産業界だけでなく広く一般社会で使用されるエポキシ系あるいはアクリル系の塗料に修復剤を内包したカプセルを混合し、自己修復の機能を評価する。炭素繊維強化プラスチックや塗料膜(膜厚数mm)への修復剤入りナノカプセルと金属触媒の混合割合や各材料のオリジナルの強度維持に必要となるカプセル導入量などについては、前年度までに蓄積したデータが参考となるであろう。
|