高分子材料は、加工性や成形性がよく、軽量で錆びず、耐薬品性等の化学的特性に優れるという利点ある反面、継続的・熱的な負荷によって内部にマイクロクラックが生じ易い。マイクロクラックの成長によって全体の破壊や被覆下地の腐食に繋がるという難点もある。マイクロクラックは、構造の奥深くで発生するため、その発見および修復を行うことは技術的に難しい。本研究は、修復剤入りカプセルを利用して高分子材料自体に修復機能を付与する自己修復モデルの構築を目的としている。自己修復モデルは、調製したカプセルがキーテクノロジーであり、自己修復モデルを効果的なものとするため、前年度に引き続き、カプセル壁材としてメラミン-ホルムアルデヒド樹脂、修復剤としてアクリル系モノマーであるメタクリル酸トリメチロールプロパンを利用したカプセル化技術に取り組んだ。本自己修復モデルは常温域より少し高い温度での重合反応をさせることを目的としているため、モデルとなる自己修復材料中に分散させた修復剤入りカプセルと金属触媒(臭化コバルトや臭化銅等)が自己修復能力を発揮する条件も前年度に引き続き詳細に再検討した。常温域より少し高い温度において自己修復を実現するためのカプセルの設計と調製の最適化は、自己修復実験の評価成果をフィードバックした。さらに、応用展開となる炭素繊維強化プラスチック(航空機や自動車などの産業、建築や橋梁の耐震補強等で使用)の自己修復モデルについては、文献調査や特許調査結果を参考にし、修復剤入りカプセルと金属触媒を導入した炭素繊維強化プラスチック試験片を作成した。試験片への修復剤入りカプセルの導入割合や金属触媒の混合割合は、前年度までに蓄積したデータを参考とした。
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