研究課題/領域番号 |
17H03448
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
原 伸生 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (70613545)
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研究分担者 |
田中 秀樹 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80376368)
長谷川 泰久 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (90392646)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 分離膜 / 気体分離 / 多孔質材料 / 金属有機構造体 / MOF / ZIF-8 |
研究実績の概要 |
本研究では、分離膜の設計に向けた多孔質材料の物性評価法開発として、①多孔質膜の分離層における吸着性および拡散性の評価法の確立、②膜構造(粒径・分離層厚み・結晶粒径・欠陥)と膜物性(吸着性・拡散性)の関係の解明、③多孔質材料の物性と膜構造に基づいた膜性能設計を目的としている。平成29年度は、多孔質材料として金属有機構造体の一種であるZeolitic Imidazolate Framework-8(ZIF-8)を用いた膜作製を行い、構造解析および透過特性の解析を行った。ZIF-8膜の作製においては、アルミナ多孔質基材の表面に種結晶層を形成した後に分離層を形成する二次成長法による膜形成を行った。実験に使用したアルミナ多孔質基材は、直径約3mmの円筒状および厚さ約1mmの平板状のアルミナ多孔質基材をそれぞれ作製した。二次成長法によるZIF-8膜の形成においては、特に種結晶層の形成条件に着目して、膜構造および膜透過特性に与える影響の検討を行った。また、「自動塗工装置」を新規に導入して、ZIF-8の結晶粉末と高分子からなる複合膜の形成を行った。膜構造の解析においては、分離層の形成量の解析、膜表面および膜断面の走査電子顕微鏡による構造解析、X線による結晶構造解析を行った。この結果、二次成長法による膜形成においては、多孔質基材の表面に厚さ約1ミクロンの結晶層が形成されたことを確認し、X線解析からZIF-8由来する回折パターンを確認した。膜透過特性の解析においては、新規に導入した「透過気体解析用質量分析計」を用いて、プロピレンおよびプロパンの膜透過特性を測定した。作製したZIF-8膜は、プロパンより小さい分子であるプロピレンの透過度が高く、分子ふるいによる選択透過性を示すことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、分離膜の設計に向けた多孔質材料の物性評価法開発において、膜形成手法の検討を行った。特に、金属有機構造体の一種であるZIF-8を用いて、二次成長法を用いてアルミナ多孔質膜の表面に結晶層を形成する方法および、ZIF-8の結晶粉末と高分子からなる複合膜の形成を行った。作製したZIF-8膜は、作製条件を変えることにより、異なる膜透過特性を示した。今後、これらの膜を用いて膜構造および膜透過特性の解析を継続し、分離層における吸着性および拡散性の評価法の確立、膜構造(粒径・分離層厚み・結晶粒径・欠陥)と膜物性(吸着性・拡散性)の関係の解明、多孔質材料の物性と膜構造に基づいた膜性能設計を進めていく予定である。以上の状況から、本研究は現在まで順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、前年度の内容を継続して実施し、解析データを蓄積して、多孔質材料の物性評価法の開発へ向けて研究を進める。具体的には、二次成長法を用いたZIF-8膜の形成においては、円筒状および平板状のアルミナ多孔質基材を作製して、二次成長法による膜形成を行う。さらに、溶液濃度、溶液濃度比、温度、攪拌条件等が膜構造および膜透過特性に与える影響の解明を継続して行う。膜構造の解析においては、分離層の形成量の解析と、膜表面および膜断面の走査電子顕微鏡による解析を行う。膜透過特性の解析においては、初年度に導入した解析装置を用いて、分子量の異なる各種気体の透過特性の測定を行う。マイクロ孔およびそれより大きな透過経路を通る膜透過の流れについて、透過気体種類や透過圧力を変化させて測定を行い、膜透過挙動を詳細に解析する。 多孔質膜の吸着特性および拡散特性の解析についても継続して実施し、特に平板状の基材を用いて作製したZIF-8膜について気体の吸着測定を行い、吸着等温線による吸着特性の解析を行う。多結晶体であるZIF-8膜の分離層においては、結晶のインターグロースによるマイクロ孔の閉塞や、アモルファス部分が残存する可能性があり、これらが膜透過特性に与える影響を解析する。以上の解析を通して、ZIF-8膜の分離層の微細構造と膜透過特性の関係を解明し、膜性能向上へ向けた指針を得る。
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