研究課題/領域番号 |
17H03452
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
多湖 輝興 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (20304743)
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研究分担者 |
藤墳 大裕 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (90757105)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 触媒反応工学 / ゼオライト / 合成ガス / 低級オレフィン / 貴金属 |
研究実績の概要 |
本年度は,基材となるバードケージ型ゼオライト触媒の調製を実施した.ゼオライト種としてMFI型ゼオライト(Silicalite-1,ZSM-5)を,金属種としては先ずロジウム(Rh)を検討した.エマルション中でRh前駆体超微粒子を調製した後,同前駆体超微粒子表面から,シリカ層を介してゼオライトを成長させることに成功した.粒子径が約2~3nm程度のRh超微粒子がゼオライトに内包された,バードケージ構造ゼオライトが得られた.さらに,酸点の局在化,コアシェル構造形成のために,本年度はRh担持量と固体酸量(Si/Al比)の独立制御を実施した.通常の含浸法やイオン交換法では,金属粒子径一定で金属担持量と固体酸量の独立制御は困難である.一方,本研究で開発した調製法では,Rh担持量を0.1wt%~1wt%の範囲,固体酸量を100<Si/Al<∞(Silicalite-1)の範囲で,Rh粒子径を約2nmで一定としRh担持量と固体酸量を独立に制御された,バードケージ構造ゼオライトの開発に成功した. Rh担持量0.1wt%,Si/Al=100のバードケージ型ゼオライト触媒を用いて,メタノールからの低級オレフィン合成を実施した.Rh超微粒子上でのメタノールからの水素生成,およびゼオライト酸点上でのメタノールからの炭化水素生成が確認された.さらに低級オレフィン(プロピレン+ブチレン)の選択率はZSM-5(約52%)と比較し,約60%まで向上した.生成水素により,生成炭化水素の環化脱水素による芳香族生成が抑制されたためと考えられる. さらに,Rhに代わる新たな金属種として,酸化ニッケル,酸化鉄超微粒子を採り上げ,これらの金属酸化物超微粒子がゼオライトに内包されたバードケージ構造ゼオライトの調製にも成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実施計画にある,Rh金属超微粒子を内包したバードケージ構造ゼオライト触媒の開発に成功している.さらに,通常の金属固定化法では不可能であった,金属超微粒子サイズを約2~3 nmで一定としRh担持量と固体酸量を独立に制御した,触媒の開発に成功した.これは,Rh超微粒子を液相中で調製した後,同超微粒子を核としてゼオライトを成長させる,本研究で開発したバードケージ構造ゼオライト触媒の調製法によってのみ達成される成果と言える.さらに,酸点を局在化させたコア-シェル構造へ展開するためには,Rh担持量とSi/Al比の独立制御は不可欠である.以上の成果より,バードケージ構造ゼオライト触媒の調製に関しては,順調に研究が進展していると言える. 本研究の目的は合成ガスからアルコールを経由して,直接低級オレフィン等の化成品原料を合成することである.本年度は予備実験としてメタノールからの低級オレフィン生成試験を実施した.Rh超微粒子上でのメタノールからの水素生成,およびゼオライト酸点上でのメタノールからの炭化水素生成が確認されたことから,Rh超微粒子による金属触媒能,およびゼオライトによる固体酸触媒能がそれぞれ発言していることを確認した.さらに通所のZSM-5と比較し,バードケージ構造ゼオライトでは低級オレフィン(プロピレン+ブチレン)の選択率が向上した.以上の成果より,バードケージ構造ゼオライト触媒の触媒機能試験に関しては,順調に研究が進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終目標は,合成ガスからのバルクケミカル高効率製造であり,同反応を実現するために貴金属超微粒子がゼオライトに内包されたバードケージ型ゼオライトを開発するとともに,その高効率な触媒作用を実証する.現在,金属超微粒子がゼオライト結晶に内包された,鳥籠状のゼオライト(鳥が金属超微粒子,籠がゼオライトに該当,バードケージ型ゼオライト)の調製法をほぼ確立するとともに,アルコールからの低級オレフィン生成能を確認した.平成30年度以降,以下の項目を実施する. ①Rh超微粒子内包バードケージ型触媒(Rh@ZSM-5)の触媒性能評価として,合成ガスからアルコールを経由した低級オレフィンと芳香族の高効率合成を実証する.反応圧力1‐3 MPa,反応温度は250~400℃で反応試験を実施し,反応温度,圧力と実際のCO転化率の関係を明らかにする. ②触媒性能向上として,酸点を外表面近傍に局在化させたコアーシェル構造のバードケージ型ゼオライト触媒(Rh@Silicalite-1/ZSM-5)を開発し,Rh超微粒子と酸点が均一に分散したRh@ZSM-5触媒とその触媒性能を比較する.合成ガスは,先ず,内部コア(Rh@Silicalite-1)においてアルコールへ転換される.次いで,内部コアから拡散により外層のZSM-5層に到達したアルコールが酸点上で縮合し,化成品原料である低級オレフィンが生成すると期待される.一方,酸量(Si/Al比)はアルコールから生成する低級オレフィンの逐次反応に関与し,オレフィンの逐次反応の進行と芳香族生成が考えられる.バードケージ型ゼオライトのSi/Al比と酸点の分布状態が,CO転化率とバルクケミカル収率に及ぼす影響を明らかにするとともに,最適な触媒設計の指針を得る. ③さらに,内包金属種としてメタノール生成に優れたパラジウム(Pd)を検討する.
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