研究課題/領域番号 |
17H03453
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大嶋 正裕 京都大学, 工学研究科, 教授 (60185254)
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研究分担者 |
吉元 健治 京都大学, 日本-エジプト連携教育研究ユニット, 特定准教授 (00645278)
引間 悠太 京都大学, 工学研究科, 助教 (50721362)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 発泡 / ナノセルラー / 光 / 高分子 / 成型加工 |
研究実績の概要 |
平成30年度の主な目標は、平成29年度に行った「紫外線(UV)照射及び熱に反応して気体を発生させる官能基を有する共重合体を選定し、光化学反応発泡法の原理検証」の研究成果を元に、「孔径の制御性を向上させ、さらに高倍率発泡を実現するための重要因子を探索すること」であった。そこで、光化学反応を用いた発泡法の操作パラメータであるUV照射量、光酸発生剤(PAG)の添加量、加熱温度及び時間に着目し、それらが気泡構造に及ぼす影響について体系的に調べた。 まず、加熱条件が気泡構造に及ぼす影響について検討するために、PAG添加量、UV照射量、加熱温度は固定し、加熱時間のみを変化させて、樹脂膜の断面SEM画像を撮影した。その結果、加熱時間が長くなると、気泡の形成が局所部分から樹脂全体に広がっていく傾向がみられた。同様な実験を、加熱温度を上げて行うと、気泡の形成がより早くなる様子がみられた。これは、高温ほど樹脂粘度が早く低下して酸の拡散が促進された結果、大量のガスが樹脂全体で発生したためと考えられる。 次に、同様なアプローチで、UV照射量とPAGの添加量の影響を調べてみたところ、どちらの操作パラメータでも、その値が大きいほど、より微細で密な気泡が形成されることがわかった。これは、UV照射量もしくはPAGの添加量の増加に伴い、ガス生成に必要な酸の量も増加して、加熱時に樹脂全体で均一にガスが発生し易くなったためと考えられる。 以上の結果を元に、操作パラメータの調整を行った結果、高温・高圧を用いない簡便なプロセスでも100~200 nm程度の気泡を多数含有する発泡プラスチックフィルムの作成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由 (1)孔径の制御性を向上させ、さらに高倍率発泡を実現するための重要因子の探索 当初計画した通り、市販の材料を用いて、光化学反応を用いた発泡プラスチックの創成プロセスについての検討を行った。具体的には、操作パラメータとして、加熱温度・時間、UV照射量、PAG添加量に着目し、気泡構造に与える影響を実験的に明らかにした。その結果、高温・高圧を用いない簡便なプロセスでも100~200 nm程度の気泡を多数含有する発泡プラスチックフィルムの作成に成功した。 (2)反応で低沸点物質を生成する官能基を有する共重合体の合成と最適構造設計 昨年度に引き続き、京都大学化学研究所の山子研究室の協力を得ながら、有機テルルを用いたリビングラジカル重合による共重合体の合成を行った。本年度は特に、光化学発泡プロセスで用いるために、共重合体の分子量を増加させることが目的であった。しかし、分子量を増加させると、高分子の粘度が大きくなるため、重合反応を制御し難くなることが問題となった。そこで、粘度を減らす目的で、エマルジョン重合を試みたが、期待した結果が得られなかった。経験不足が一因として考えられる一方、最近山子研究室で開発されたエマルジョン重合は高高分量の共重合体合成にも適用されているので、今後はその方法を用いながら所望の共重合体が合成できるかを検討していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度 <前期> まず昨年度に達成できなかった「反応で低沸点物質を生成する官能基を有する共重合体の合成と最適構造設計」を引き続き行う。具体的には、まず最近山子研究室で開発されたエマルジョン重合を用いて、高高分量の共重合体合成の合成を取り組む。次に、その共重合体を用いて、昨年度に構築した光化学反応発泡プロセスで、どのような気泡が得られるかを調べ、樹脂に対する最適構造設計を行う予定である。 <後期> 当初平成31年度に予定していた課題である「セルロースナノファイバーの機能性発泡核剤への化学変性」に取り組む予定である。これまでに蓄積した光化学反応発泡プロセスの知見を生かし、セルロース表面のOH基をtert-Butyl基に置き換えることで、光化学反応でガスを生じるセルロースナノファイバーの作成を試みる。最終的には、化学変性させたセルロースナノファイバーを樹脂に溶融混練し、ナノ発泡剤として機能するかを検討する予定である。
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