研究課題/領域番号 |
17H03458
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
和田 健司 香川大学, 医学部, 教授 (10243049)
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研究分担者 |
馮 旗 香川大学, 工学部, 教授 (80274356)
吉田 朋子 大阪市立大学, 複合先端研究機構, 教授 (90283415)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | グリーンケミストリー / 固体触媒 / イリジウム錯体 / 酸化セリウム / 酸化チタン |
研究実績の概要 |
本研究では、固体結晶表面上での有機金属種の構造や動きを自由自在に制御し、複合機能を引き出す動的な有機金属化学の系統的研究を進めることで、飛躍的に優れた環境対応性能を有する超高活性・高機能固体触媒を創成する。特に、固体表面を特殊な反応場とみなして超高活性触媒種に「その場」変換する手法を確立し、広範な有機合成の環境負荷の飛躍的低減を目指す。 そこで本年度は、有機イリジウム錯体と固体の金属酸化物等を活用したRelease- Return 機構で機能する触媒について、スチレン類の脱水素シリル化反応の焦点を絞り、錯体や酸化物の選択や触媒前処理条件、および反応条件の最適化によって触媒活性の最大化を図った、その結果、[IrCl(cod)]2錯体(cod = 1,5-cyclooctadiene)および酸化セリウムを活用することで、高い触媒回転数および触媒回転頻度を示す一方、容易に併発するヒドロシリル化反応の進行をほぼ完全に抑制でき、高い選択性を示す触媒を開発した。 一方、脱水素型および水素移動型と、異なる経路によるベンゾイミダゾール等の含窒素有機化合物合成反応に有効な触媒をそれぞれ開発し、各反応の触媒活性を支配する因子を示すとともに、表面イリジウム種の形態や電子状態に酸化チタン担体の結晶構造が顕著な影響を及ぼすことを明らかにした。特に、脱水素型にはルチル担持触媒が特に高い活性を示したが、電子豊富な表面イリジウム種の形成によると推察される。一方、水素移動型反応に対しては、{010}面を豊富に有する酸化チタンが特に担体として有効であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有機イリジウム錯体・酸化セリウム複合系触媒開発においては、当初目標を大きく上回る触媒回転数および触媒回転頻度を既に達成しており、当初の計画以上に進展した。一方、分光学的「その場」解析等による触媒活性種の動態解明を試み、酸化セリウム上に吸着したイリジウム種の電子状態等を解明したが、液相で機能しているイリジウム種の構造解明には至っていない。また、脱水素型および水素移動型ベンゾイミダゾール類合成反応の双方に対して、従来の固体触媒と比較して飛躍的に温和な条件で機能する酸化チタン担持イリジウム触媒を開発した。特に、酸化チタン表面の結晶構造が表面イリジウム種に及ぼす影響を系統的に明らかにしており、他の反応や触媒への応用が期待できる。さらに、近赤外分光イメージングによる迅速な生成物の定量評価法を見出す等、想定外の成果も得た。よって1年目に想定した目標を概ね達成したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
申請時の計画に従い、有機金属錯体・金属酸化物複合系触媒や担持触媒について、引き続き触媒性能の最大化を図るとともに、触媒活性種の特定と有機金属錯体からの活性種の発現機構および触媒活性の支配因子の解明を進める。触媒の再利用性と環境対応性能の向上を図る一方、社会的に有用な多様な有機合成反応への適用を進める。さらに豊富に存在する元素の活用を図る。
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