研究課題/領域番号 |
17H03461
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
竹中 壮 同志社大学, 理工学部, 教授 (10302936)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コアシェル型触媒 / 界面 |
研究実績の概要 |
Ptに代表される貴金属は触媒活性成分として頻繁に利用される.例えば自動車排ガス処理用触媒の活性成分としてPt,Rh,Pdが利用される.これら貴金属を触媒活性成分として利用する際には,シリカに代表される酸化物担体上にナノ粒子として担持されることが多い.貴金属をナノ粒子化することで貴金属単位重量当たりの表面積は大きくなるため,貴金属使用量低減に貢献できる.またこれらの担持触媒では,貴金属―酸化物界面が特異な触媒作用を示すことが多い.例えば酸化チタン担体と金粒子の界面が特異な触媒作用を示すことが見出されている.そこで貴金属-酸化物界面の精密設計が必要となるが,一般的な触媒調製法で得た酸化物担持貴金属触媒では,貴金属-酸化物界面に加え,むき出しの貴金属表面が存在する.そのため貴金属―酸化物界面に加え,貴金属表面の触媒作用も発現する.そこで貴金属―酸化物界面を優先的に有する,貴金属ナノ粒子をコア,金属酸化物粒子をシェルとするコアシェル型触媒の開発が進められている.開発された触媒の多くは直径10nm程度の貴金属粒子が厚さ数十nmの金属酸化物粒子に内包された構造である.これらの触媒では貴金属―酸化物界面を優先的に有するため,界面の触媒作用のみを利用できる.しかし貴金属粒子が大きいため,高価な貴金属を多量に使用しなければならない.またシェル層が厚いため,シェル層内での物質拡散が遅いことが問題となる.よって直径数nmの貴金属粒子が厚さ数nmの酸化物層で被覆されたコアシェル型触媒が理想的な構造と考える. 我々は酸化グラフェンを鋳型に利用した酸化物ナノシートの調製に成功している.本課題では我々が独自に開発した酸化物ナノシート調製法を利用して,貴金属ナノ粒子が金属酸化物ナノシートで被覆された構造を有するコアシェル型触媒を開発するとともに,それらの触媒反応への応用を検討する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は酸化グラフェンを鋳型にして金属酸化物ナノシートの調製に成功している.この方法では,酸化グラフェンを金属アルコキシドを含むシクロヘキサン中に分散させ,十分に攪拌した後,オートクレーブ内で180℃に加熱することで,酸化グラフェン上に金属酸化物ナノシートを生成させる.酸化グラフェンの含酸素官能基に金属アルコキシドが吸着し,オートクレーブ内での加熱中にそれらが加水分解することで金属酸化物ナノシートが生成する.そこで酸化グラフェンに貴金属ナノ粒子や貴金属前駆体ナノ粒子を固定化し,その後これらに金属酸化物の前駆体である金属アルコキシドを吸着,加水分解することで,貴金属ナノ粒子が金属酸化物ナノシートで被覆された構造を有するコアシェル型触媒が調製できると考えた.そこで本年度は,貴金属としてPtに,酸化物として酸化チタンに注目し,コアシェル型触媒を試みた.Pt前駆体ナノ粒子の調製には,エタノールに溶解させたPtアセチルアセトナートへの紫外線照射を利用した.これによりPtカチオンから成るコロイドを得ることができ,またこのコロイドは酸化グラフェン上に強く吸着した.そこでこのPt種コロイドが吸着した酸化グラフェンをシクロヘキサン中に分散し,ここにチタンテトラブトキシドを加え攪拌後,オートクレーブで180℃に加熱した.その結果,酸化グラフェン上に直径数nmのPt種粒子が固定化され,それらが極めて薄い酸化チタンナノシートで被覆されていることが示唆された.さらにこれらを空気中で加熱し酸化グラフェンを燃焼除去したところ,Pt粒子と酸化チタンナノシートから構成されるコアシェル型触媒が生成することが示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究により,酸化グラフェン上にPt前駆体粒子を固定化し,これらを酸化チタンナノシートで被覆することにより,直径数nmの金属Pt粒子と厚さ数nmの酸化チタンナノシートで構成されるコアシェル型触媒が調製できることが示唆された.そこで今年度の研究では,コアシェル型触媒のキャラクタリゼーションと,他のコアシェル型触媒の調製へと研究を進めていく予定である. 1)コアシェル型触媒のキャラクタリゼーション 昨年度の研究では,Ptナノ粒子と酸化チタンナノシートから構成されるコアシェル型触媒の生成が示唆された.この結果は透過型電子顕微鏡像の結果に基づくものである.したがって,この触媒がPt-酸化チタン界面に特徴的な触媒作用を示すことを明らかにしなければならない.そこで本年度は,Ptナノ粒子―酸化チタンナノシートから構成されるコアシェル型触媒の触媒作用を明らかにすることを目的に,これらを触媒に利用してアルコールの酸化,酸素還元反応,α,β―不飽和アルデヒドの部分水素化,アルキンの部分水素化などを行う.この結果を基に,Pt-酸化チタンナノシート界面の触媒作用を明らかにする. 2)他のコアシェル型触媒の調製 昨年度の研究ではPtをコア,酸化チタンをシェルとした触媒を調製した.本法で所望のコアシェル型触媒を調製するには,貴金属ナノ粒子の酸化グラフェンへの固定化と,それらの金属酸化物前駆体での被覆が技術課題となる.そこで各種貴金属前駆体の酸化グラフェンへの吸着挙動を明らかにすることで酸化グラフェン上への貴金属の高分散担持を試みる.また酸化グラフェン上の官能基と強く相互作用する金属酸化物前駆体およびそれらの固定化条件の最適化を行うことで,シェル層の効率的形成を試みる.
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