研究課題/領域番号 |
17H03463
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
関 実 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (80206622)
|
研究分担者 |
山田 真澄 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30546784)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | マイクロナノデバイス / 細胞選抜 / 3次元組織 / 細胞外マトリックス / 細胞アッセイ |
研究実績の概要 |
初年度に当たる平成29年度は,まず,細胞のキャリア液交換、選抜、および配列を行うための個別マイクロ流体デバイスを行った。「キャリア液交換」については,複数の分岐を有する流路構造を用いた溶液交換手法を応用し,最大で4段階の溶液交換をシームレスに行うシステムの開発と評価、さらにその機能化を行った。また,特定の細胞の分離・選抜手法として,拡大部と狭隘部を交互に多数形成した流路構造を用い,水力学的作用による細胞の配列と分離を行う流路の設計と実証を行い,とくに血液細胞を対象とした評価を行ったほか,サイズ以外の要因として,細胞の変形能を利用した細胞選抜システムや,細胞分離のスループット向上を目指した3次元的流路構造の提案・開発を行った。これらいずれの系も,これまでに報告されていなメカニズムに基づく細胞分離手法であり,今後は分離性能の向上と,特定の細胞をターゲットとした応用展開を図る予定である。 また,細胞を「生きたまま」ECM等のコラーゲン材料に包埋する技術の開発を進めることができた。主にコラーゲン水溶液,場合によってはアルギン酸水溶液を用い,単位構造となるファイバー構造,あるいは管腔状の構造作製を実証した。特に管腔構造の作製においては,弱酸性のコラーゲン水溶液をpHの調整によって急速にゲル化する手法について,細胞の生存率や増殖能を評価したほか,複数種類の細胞を同時に導入した3次元的ハイドロゲル材料を作製することができた。細胞としては,主に株化細胞を利用した検討を行ったため,今後はプライマリ細胞(肝細胞,心筋細胞,上皮細胞など)を利用した機能評価を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞の溶液交換、分離、3次元配置を可能とする個別のマイクロ流体システムの開発については、概ね当初の計画通りの進捗が見られた。高粘度水溶液を用いた溶液交換システムなど、一部現在も検討中の項目があるものの、細胞の組織化による肝臓模倣組織や血管模倣組織などの作製、さらには3次元的な流路構造を利用した細胞・粒子分離システムなど、当初の想定を超える成果も得られたため、研究自体は概ね順調に推進しているものと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の2年目に当たる平成30年度は,初年度に引き続き,細胞やバイオ微粒子を分離・選抜するためのマイクロ流体システム,および,細胞を3次元的に配置し複合化するためのマイクロ流体デバイスの開発を行いつつ,「細胞の選抜・配列・組織化」という一連のプロセスをシームレスに行うための流路システムの開発を目指す。細胞の分離を兼ねた溶液交換技術としては,水力学的濾過手法に基づく新規デバイスを設計・作製し,その有用性を実証する予定である。また,格子状の流路構造あるいはピンチド・フロー・フラクショネーション法の改良による新規原理に基づく新規システムについて,その適用可能性を検証する。また細胞の3次元組織化については,これまでに主に用いてきたアルギン酸に加え,コラーゲン材料,あるいは中空のコラーゲンファイバーを,マイクロ流路層流系を用いて加工する新規手法の開発を行う。細胞としては,肝細胞(初代細胞あるいは培養細胞)を用いるほか,血球系の細胞や血管細胞(平滑筋あるいは内皮細胞),筋芽細胞などを利用する予定である。細胞の生存率や生化学的な機能評価を行うことで,これら個別の操作が細胞にどのように影響を与えるかについて評価する。そして,これらの操作を一連の操作によって可能とする新規デバイスの設計と作製を行い,統合化プロセスの有用性を実証するとともに,形成された3次元組織に対する潅流培養を行うことによって,細胞機能を最大限に発揮する条件を見出したいと考えている。
|