研究実績の概要 |
【背景】 生体膜中には、飽和脂質とコレステロール(Chol)に富んだラフトドメインが形成されていることが示唆されており、シグナル伝達など機能発現の場としての働きがあると考えられている。モデル膜であるリポソームにおいても、ラフトドメインを模した液体秩序(Liquid-ordered, Lo)相を再現することができる。ラフトの重要な構成成分であるコレステロールは、活性酸素などにより7-ketocholesterolや7β-hydroxycholesterolといった酸化コレステロール(Oxy-Chol)へと変化する。酸化コレステロールは、生活習慣病との関連が指摘されているが、ラフトの安定性に及ぼす影響については、十分に理解されていない。そこで酸化コレステロール含有膜においてのラフトの安定性を考察した。【方法】 不飽和脂質DOPC、飽和脂質DPPC、Chol、酸化コレステロール(7keto, 7β)を用いて静置水和法によりリポソームを作成、多成分脂質膜の相分離消失温度(Tmix)を測定し、ドメインの安定性を調べた。【結果・考察】7βは、濃度依存的に相分離構造形成を阻害することが分かった。一方、7-ketoはChol/7-keto=5:15,10:10,15:5では、Lo/Ld相分離が多く形成されていた。しかし7-keto単独ではドメイン形成をしないことが分かった。相分離消失温度(Tmix)の測定を行った結果、7-ketoを含んだ組成の方が、Tmixが上昇することが分かった。Cholと7-ketoが共存する場合に、相分離構造が7-ketoを含まない場合よりも安定化されることが示唆された。その他、冷感剤メントール、局所麻酔薬、化学合成したイオンチャネルについても、膜との相互作用を解析した。
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