【背景・目的】界面活性剤の刺激性評価方法として、ウサギの眼に界面活性剤を点眼するドレイズ試験があるが、定量性は低く、動物愛護の面でも代替法の開発が望まれている。生体模倣膜リポソームに界面活性剤を作用させ、リポソームの膜形態変化のダイナミクスを観察し、その変形パターンを通して刺激性評価の指標を見出す研究を行い、膜脂質と界面活性剤の相互作用と刺激性の相関について界面活性剤の分子形状に基づいて考察した。さらに数理モデル、シミュレーションを行うための予備的な解析を試みた。 【方法】不飽和リン脂質Dioleoyl-Phosphatidylcholine(DOPC)からなるリポソームを作製し、共焦点レーザー顕微鏡を用い、リポソームの変形過程を観察した。界面活性剤は構造を系統的に変化させることができるポリオキシエチレンアルキルエーテル(POE)親水部、疎水部の大きさが異なる計6種を使用した。膜変形ダイナミクスを解析し、膨張・収縮速度の測定を行った。 【結果・考察】親水基が小さいとリポソームが膨張し、大きいとリポソームが収縮した。また、疎水基が小さいとリポソームが破裂し、大きいとリポソームが収縮した。先行研究より、膜面積(余剰面積)が増加するダイナミクスは高刺激性で、リポソームが収縮するダイナミクスは低刺激性であることがわかっている。疎水基と親水基がともに大きい場合に刺激性が低くなることが予想される。また、Flip-Flopしやすい界面活性剤は刺激性が強いと考えられ、疎水基が大きい場合は強い分子間力により、大きな親水基は疎水部を通過する際の障害となるため、Flip-Flopが阻害されると考えられる。これらの結果から界面活性剤の分子構造と刺激性の相関について分子の動きに基づき、シミュレーションを行うための数理モデルを作成中である。
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