研究課題/領域番号 |
17H03468
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
冨田 昌弘 三重大学, 工学研究科, 特任教授(研究担当) (20183494)
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研究分担者 |
中野 秀雄 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (00237348)
安川 智之 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 教授 (40361167)
湊元 幹太 三重大学, 工学研究科, 准教授 (80362359)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 立体構造認識モノクローナル抗体 / 誘電泳動 / 無細胞発現系 / プロテオリポソーム / 分子標的治療薬 |
研究実績の概要 |
1. SST(立体構造特異的ターゲティング)法のGPCR(Gタンパク質共役受容体)以外の膜タンパク質への応用を目ざし,1回膜貫通タンパク質 CHL1 (close homolog of L1) をターゲットして検討した.その結果,SST法で必須となる組換え細胞の作製に有望な知見を得た.さらに,立体構造特異的モノクローナル抗体の一括作製を目ざしIntegrin組換え細胞の獲得を検討した. 2. 単一B細胞から,直接モノクローナル抗体を取得する新規法であるEcobody法を用いて,EGFRなどの立体構造認識ウサギモノクローナル抗体の取得を行った.得られた抗体はEGFRに結合するだけでなく,A431細胞を免疫染色で強く染めることがわかった.またEcobody法の技術向上をめざし,Swine Influenza Virus をモデルとして,より効率的にウサギモノクローナル抗体を取得できる条件を探索した. 3. 誘電泳動を利用した細胞の自由度の高い操作により,細胞アレイの形成,細胞ペアの形成,抗体産生細胞の識別およびその細胞の回収を行った.しかし,標的細胞をマイクロ流路デバイス外に回収することは極めて困難であった.そこで,上部を可動型電極とし,細胞アレイ形成後に取り外すことにより上面オープンの細胞アレイを得た.標的細胞を確実に回収するために,電気泳動と電気浸透流を融合したガラス電極の作製と評価を行った. 4. 引き続き,人工脂質膜へGPCR(β2AR)を提示する組換えバキュロウイルスの出芽粒子を膜融合しマイクロビーズ等に展開提示する方法の検討を進めた.ビーズ上の受容体は,抗原として,特定の抗体に対し,細胞(昆虫由来)に発現させた組換え受容体と同様の反応性を示すことを観察し,本方法の有効性を確認した.多数のマイクロビーズ上の再構成膜を検鏡,取得した画像の解析からより半定量的に評価する方法を検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. CRHR1を含む複数のGPCRに対する立体構造特異的モノクローナル抗体の作製に成功した.抗CRHR1抗体については,Cell-ELISA法,免疫蛍光染色法およびウェスタンブロッティング法に基づきモノクローナル抗体の立体構造認識を明らかにすることができた.また,GPCR以外の膜タンパク質である CHL1 に対しても,SST法で必要となる組換え細胞の作製を行い,有望な結果を得ている. 2. 膜タンパク質であるヒトEGF受容体に対するウサギモノクローナル抗体候補の取得に成功した.またPCRのプライマー設計,細胞の選択方法も検討し,Ecobody法の効率化も達成できた. 3. 当初予定していた細胞アレイの形成,細胞ペアの形成,抗体産生細胞の識別およびその細胞のウェル外への放出を行うことができた.さらに,標的細胞を回収し培養するために,上部可動型電極による細胞操作を行った.また,標的細胞の回収を目的とし,電気泳動型ガラス電極の作製と評価を行い,単一細胞の操作を達成した.上部可動型電極により,免疫化マウスの脾臓細胞とミエローマ細胞のペア形成および融合ができた. 4. 引き続き,GPCR(β2AR他)等を抗原提示する実験方法を検討してきた.さらに発現細胞を別に用意し,細胞と比較することで,脂質膜提示マイクロビーズの持つ再構成膜は,細胞発現した組換えタンパク質を写し取ったものであり,目的抗原提示に有用であることが分かった.ビーズとしたことから,抗体との反応,回収が容易であり,さらに簡単な画像解析の適用で信頼性が増すことが確認できた.
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今後の研究の推進方策 |
1. GPCR以外の膜タンパク質であるCHL1などに対するSST法の有用性を検証する.さらに,立体構造特異的モノクローナル抗体の評価法の検討,複数膜タンパク質に対する高次構造認識モノクローナルの一括抗体作製法の開発,また,ヘテロ2分子会合体タンパク質を特異的に認識できる立体構造特異的モノクローナル抗体の作製,転写因子を含む可溶性タンパク質へのSST法の応用へと,幅広く進展させたいと考えている. 2. これまでに取得した複数の候補について,その抗原特異性をウェスタンブロッティング,免疫染色,エピトープマッピングなどで評価する.さらにhEGF受容体へのアゴニスト・アンタゴニスト活性を,細胞増殖活性およびhEGFRのリン酸化への影響などを解析することで評価する. 3. これまでに行ってきた,細胞アレイの形成,異種細胞ペアの形成,細胞融合,抗体産生細胞の識別および標的細胞回収を一連で行えるシステム構築を行う.アレイ化細胞の中から標的細胞以外の細胞を電気パルスにより破砕して除去することにより,標的細胞をウェル内に残し培養して標的細胞を濃縮回収する.また,ガラス電極法を用いた確実な細胞回収技術を開発し,標的細胞および融合細胞の培養を行い,ハイブリドーマを取得する. 4. 現在,提示する膜受容体2種類で特異性を確かめられている.立体構造認識の評価においては,さらに検討中である.提示抗原となる膜タンパク質の種類を,さらに増やしていき,組換え体発現細胞との比較,哺乳類細胞のおける提示を含め行いながら,適用可能性が高められるよう検討する.同時に,本方法を補完する目的で,ビーズ提示に変わる他の提示方法も,自立膜やナノビーズも念頭に検討に含める.
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