研究課題/領域番号 |
17H03469
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
井藤 彰 九州大学, 工学研究院, 准教授 (60345915)
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研究分担者 |
堀江 正信 京都大学, 環境安全保健機構, 助教 (60727014)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ティッシュエンジニアリング / 骨格筋 / 磁性ナノ粒子 / 薬剤スクリーニング / iPS細胞 |
研究実績の概要 |
再生医療の研究において、ヒトiPS細胞から生体内の機能的な細胞への分化誘導法の開発が行われており、骨格筋においても筋転写因子の一つであるMyoD遺伝子をiPS細胞に導入することで、筋芽細胞へ分化することが報告されている。さらに、筋疾患患者由来の細胞から筋疾患iPS細胞を作製し、筋疾患に関する遺伝子を、近年発展の著しいゲノム修飾技術によって高効率かつ高精度に修復できることも示されている。しかしながら、筋肉の最も重要な機能である「収縮力」を指標とした評価は依然なされていない。本研究では、ヒトiPS細胞から「動く」筋組織を作製して、収縮力を指標とした筋機能評価という新しい評価法を提案する。平成30年度は、健常者由来のiPS細胞(409B2株)を用いて、我々オリジナルの磁性ナノテクノロジーを基盤とした三次元組織作製法(Magnetic foce-based tissue engineering法, Mag-TE法)により三次元筋組織を構築することに成功した。レチノイン酸添加によって細胞の生存率が高まることを見出し、電気刺激培養を行うことで、電気刺激に応じて収縮運動する筋組織の構築に成功した。さらに、微細加工技術により作製したPDMSからなる微細デバイスを用いて、ヒトiPS細胞からMag-TE法によって三次元筋組織を作製し、電気刺激で収縮して力を発生するマイクロ組織の構築法を確立した。これらの成果は、骨格筋組織再生や薬剤スクリーニングへの応用に向けた人工筋組織の作製にとって有用な知見となると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
難関だと考えていた「動く」三次元筋組織の構築に成功し、またいくつかの成果が論文として受理されたことから、順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに、筋ジストロフィ患者由来iPS細胞の筋芽細胞への分化誘導法を確立した。本年度は、研究申請書にしたがって、以下の通り、三次元組織構築法の検討を行う。1)ヒト筋ジストロフィiPS細胞を用いた検討。前年度までに、磁性ナノ粒子を用いて細胞を磁気標識し、磁力で積層して三次元培養することにより、ヒト正常iPS細胞から三次元筋組織を作製することに成功している。今年度は、正常ヒトiPS細胞の筋組織構築法を踏襲して、さらに細胞外マトリクスの種類や濃度および細胞密度等の詳細な培養条件の検討を行うことで、高度な分化誘導効率と高い再現性を実現することで、ヒト筋ジストロフィiPS細胞を用いた骨格筋組織構築法を確立する。2)マイクロデバイスを用いた検討。前年度までに、薬剤のハイスループットスクリーニングを目的として、PDMSによるマイクロデバイスを開発した。磁気標識した細胞を二つのマイクロピラー間に播種し、磁力で集積させることでマイクロピラー間に引っかかった骨格筋組織様構造体を作製することに成功した。今年度は、iPS細胞を用いてマイクロデバイス内にマイクロ骨格筋を作製する手法を開発する。前年度までに、マイクロデバイスが多検体を同時に処理できるハイスループット性を活用して、様々な条件で正常ヒトiPS細胞を用いてマイクロ組織を作製し、「動く」正常ヒトiPS細胞由来マイクロ骨格筋組織の作製に成功した。今年度はヒト筋ジストロフィiPS細胞を用いた検討を行い、細胞数・細胞外マトリクス量などを最適化することで、ヒト筋ジストロフィiPS細胞を用いた骨格筋組織構築法を確立する。 また、最終年度として、これらの研究成果をまとめることで、ヒトiPS細胞を用いた骨格筋ティッシュエンジニアリング技術の開発に関する研究を総括する。
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