本年度は繊維強化型クラックアレスタを用いて疲労接着亀裂の停止について検証を実施した。実構造での荷重状態を模擬する試験として、補強材終端部等を想定したCrack Lap Shear試験を用いて引張-引張疲労負荷下で接着亀裂を進展させた。初期においては負荷サイクルに比例して亀裂長さが増加したが、亀裂先端がアレスタ繊維交差部を通過すると亀裂進展速度が著しく低下し、最終的に停止することを確認した。アレスタの材料構成および厚みを変化させることで亀裂停止効果が顕著になる亀裂長さが変化することも明らかにした。次に試験を模擬した有限要素解析を実施し、仮想き裂閉口積分法を用いて亀裂先端のエネルギー解放率を計算した。亀裂先端がアレスタ繊維交差部を通過すると、亀裂面で多量の繊維架橋が発生することで亀裂の開口と接着境界で発生する偏心による2次曲げを抑制することで亀裂先端での応力集中が抑制されることが分かった。また高い生産性と亀裂誘導性を備えるアレスタ導入方法として、被着材の表層を交差繊維層に併用する新たな製造法を構築した。作製した試験片を用いて疲労接着亀裂の停止を実証し、X線CT観察を用いた観察から高い成形品質と亀裂の誘導性を両立可能であることを確認した。また接着接合部以外への繊維強化型アレスタの適用拡大の試みとして、複合材Tジョイント接合部を対象とした検討を実施した。標準材の破壊進展挙動をもとにフランジ-スキン接着界面にアレスタを導入した供試体に面外引張荷重を負荷する試験を実施し、損傷許容性を大幅に向上できることを実証した。
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