研究課題/領域番号 |
17H03478
|
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
石井 一洋 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (20251754)
|
研究分担者 |
片岡 秀文 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10548241)
前田 慎市 埼玉大学, 研究機構, 助教 (60709319)
小原 哲郎 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (80241917)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 推進 / エンジン / デトネーション / 衝撃波 |
研究実績の概要 |
本研究では、回転デトネーションエンジン(RDE)の運転条件や燃焼器サイズ等の設計パラメーターが伝播モードに及ぼす影響を系統的に調べ、伝播モードを支配する因子を特定するとともに、伝播モードと推力との関係について調べることで回転デトネーションエンジンの安定作動条件を明らかにし、普遍的な燃焼器の設計指針を確立することを目的とするものである。 平成29年度は、外径95 mm、内径115 mmの円環状の燃焼室を有するRDE燃焼器を用いて、軸方向オリフィスより燃料を、円周スリットより酸化剤を供給する構造とし、オリフィスおよび円周スリット断面積を変化させることで当量比および推進剤供給流量を制御した。使用した推進剤は、量論混合比の水素―酸素富化空気混合気(2H2+O2+βN2)であり、窒素希釈割合βはβ=0~3.73 と変化させた。また試験時間は貯気槽サイズから200 msとした。 その結果、β=0以外の混合気について回転デトネーション波(RDW)の安定伝播が得られ、以下の知見が得られた。①RDWの伝播モードは推進剤の質量流量により決定され、試験時間中の伝播モードも質量流量の変化に追従するする。②推進剤の供給圧力については,RDW安定伝を得るための下限値が存在するが、伝播モード自体へは影響を及ぼさない。③推進剤の燃焼室内の到達長さ h とセルサイズ λ を用いると、窒素希釈料によらず h/λ が増加するとRDW伝播速度がCJ速度に近づき、伝播速度ならびに圧力振幅が安定するとともに、波頭数が増加する。④h/λ>2.8 を満たす推進剤供給条件でRDWは安定伝播する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RDE燃焼器の構築は計画通りに遂行されており、非燃焼状態において燃料および酸化剤の供給圧力と質量流量の関係が求められている。また、RDWの伝播モードを燃焼室のある力履歴および下流からの高速度撮影によりstable、marginal、unstable、failureに分類し、RDW伝播モードは燃料および酸化剤の供給圧力にはよらず、基本的には推進剤質量流量に依存することを明らかにしている。また、推進剤が燃焼室内で充填される軸方向の長さ hと、デトネーションの特性長であるセルサイズλとを用いて安定伝播条件を定式化することに成功している。 以上のことから、本研究は「おおむね順調に進展している」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
現段階ではRDEの推力計測試験を実施していないため、今後は平成29年度に得られた知見を基に、RDW伝播モードと推力性能との関係を調べることを行う。また、燃焼器のサイズが異なればRDW安定伝播に必要な推進剤質量流量も異なると考えられるため、異なるRDE燃焼器を用いた実験を行い、燃焼器サイズとRDW安定伝播条件ならびに伝播モードとの関係を調べる。さらに、推進剤の種類を変化させて、これまでに行ってきた各種実験を行い、推進剤供給圧力および供給量、燃焼器サイズをデトネーションの特性量を用いて無次元化し、RDW伝播モードのマッピングを一般化する。また、推進剤の流線に沿った状態変化を記述する1次元モデルを構築し、このモデルによる推力性能解析を行い、実験結果と比較してモデルの修正を図る。 最終的には、様々な運転条件、燃焼器サイズ、推進剤種類に対応可能なRDE燃焼器設計指針と性能予測方法を確立することを行う。
|