研究課題/領域番号 |
17H03484
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
田原 弘一 大阪工業大学, 工学部, 教授 (20207210)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 宇宙推進 / 電気推進 / 電磁加速プラズマスラスタ / 定常作動 / 永久磁石 / 惑星探査 / 火星有人探査 |
研究実績の概要 |
MPDスラスタの推進性能向上(広範な比推力の達成、推力の増大、推進効率の向上) 1)各種の外部磁場を永久磁石により印加し、外部磁場とプラズマとの干渉現象を調べ、効率良いスワール加速、ホール加速を実現した。特に、これまでの研究から、放電室上流部にカスプ磁場(磁力線の吸い込み部(カスプ部)を有する磁場形状)を印加し放電をカスプ付近に集中させ、その下流部に発散磁場を印加し、スムーズにプラズマを加速することが可能であり、放電電圧の上昇を防ぎ(発散磁場のみでは、放電電流が下流に大きく張り出し、極度に電圧上昇・推進効率低下)、推力のみを増大させることができた。陽極・陰極を含む放電室の形状・大きさを変化させ、放電部とプラズマ加速領域の位置を制御し、最適なプラズマ生成・加速状態を実現した。特に、放電室のスロート部の形状が重要であり、作動条件に合わせた最良設計を行った。 2) 耐久性改善(陰極損耗の低減)と完全輻射冷却方式システムの提案 中空陰極、特にマルチ中空陰極を積極的に用い、その損耗を低減させる。すでに予備実験により、陰極アーク放電モードとして拡散放電モード(陰極表面温度がその融点以下で安定作動)を実現できることが分かっており、更なる空間的な不均一性の改善や最適な作動条件を探索することにより、大幅に損耗量を低下できた。更なる長時間作動用に、陰極を交換できる機構を装備した放電室を考案した。陰極損耗によりスラスタ作動が停止した時、陰極を差し替える機構を放電室後部に装備させた。決して水冷しない簡便な実用スラスタシステムを提案した。外部磁場の印加は水冷コイルではなく、永久磁石で行った。放電電極は水冷せず、完全輻射冷却方式である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
下記の二つの項目において、十分な成果が得られている。 1)推進性能向上(広範な比推力の達成、推力の増大、推進効率の向上) 2) 耐久性改善(陰極損耗の低減)と完全輻射冷却方式システムの提案
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今後の研究の推進方策 |
推進性能の向上、陰極損耗の低減、スラスタシステムの設計製作、作動実験に努めるとともに、作動条件・スラスタ構造が与えられた時、推進性能を予測できる設計相似則を提案する。推進性能と耐久性を考慮した、最適な外部磁場の形状・強さの提案も可能にする。 1)三次元プラズマシミュレーションにより、外部磁場印加型MPDスラスタの放電室内部、およびその下流の噴出流の状態を調べる(研究業績(7))。定量的により正確に、プラズマ生成・加速状態を把握するために、計算結果と実験結果を比較検討し、高い推進性能(高推力、高比推力、高推進効率)を達成できる最適作動状態を提案する。これらより、MPDスラスタ実験機の改良点を決定する。 2)作動実験と数値シミュレーションから提案されたMPDスラスタの最適設計を行い試作する。推進性能、プラズマ特性、流れ場の状態を再び測定し、数値シミュレーション結果と比較検討する。数値計算モデルの改良と共に、スラスタ本体、および全体システムの更なる改造を行う。推進性能を正確に予測できる計算コードを構築すると共に、スラスタ設計のための相似則を提案する。 本数値シミュレーションは主にマサチューセッツ工科大学のワークステーションを利用して行われ、作動実験は大阪工業大学工学部機械工学科にて行われる。ここで用いられる三次元プラズマ計算コードはMPDスラスタの内部現象解明のためにマサチューセッツ工科大学にて開発され、前述の流体モデルにおける計算上の仮定をすべて取り払った完全三次元流体・粒子ハイブリッドモデルであり、流体近似が不可能なスラスタ噴出流の領域まで正確に計算することができる。MPDスラスタ内部の物理現象の把握と共に、推進性能の正確な予測と相似則の確立のために本研究にとって必要不可欠である。
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