研究課題/領域番号 |
17H03486
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
藤田 和央 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (90281584)
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研究分担者 |
野村 哲史 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究開発員 (80709361)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 極超音速空力特性 / 実在気体効果 / 非平衡気体力学 / 軽ガス銃 / 火星探査 |
研究実績の概要 |
(1)軽ガス銃ガスドライバの改修による模型射出速度の向上:軽ガス銃ガスドライバ改修によって,既存の軽ガス銃の射出速度を火星大気突入環境(4 km/s)まで向上させた.本作業は FY29 に完了する計画であったが,高圧ガス保安協会の設計承認が遅れたため計画変更を行い(繰り越し済),H30 9月までに作業を完了させ,以後試運転と運転条件の確認を行った. (2)模型自由飛行観測のための観測システムの開発:(1)の計画変更に伴い,模型が自由飛行を行う間にその運動を連続的に観測するための観測部の開発を前倒して進め,2018 年 7 月までにこれを完了した.実在気体空力計測に必要な全長 3.0m の自由飛行領域に 0.9m 毎に観測窓 4 つ有する観測部を完成させた. (3)模型自由飛行観測システムの開発:(1)の計画変更に伴い,模型の自由飛行軌道に沿った位置,速度,姿勢を決定するための高速撮像システムの開発を前倒しで行い,2018 年 7 月までにこれを完了した.4 つの観測窓へ,それぞれ 4 台の高速ゲート機能付きカメラを設け,模型の姿勢を正確に決定するために 40 ns以下の発光時間・30 kHz で発行するフラッシュ光源を用い,1 ms程度のシャッター機能を有するメガピクセルカメラ 4 台に多重露光を行うことによって,模型の多重画像が取得できるシュリーレン光学観測システムを開発した. (4)運動解析にもとづいた空力特性の定量化:2018 年 9 月以降は装置の試運転とともに観測システムの試験運用を行った.並行して,得られる画像から模型の自由飛行軌道に沿った位置,速度,姿勢から,逆問題として模型に働く空気力を定量化する手法の開発を進めた.シミュレーション上では,得られる連続画像から姿勢・位置の時系列変化が算定されることが確認され,2019 年度以降の本格運用に向けた準備を完了した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度(2017年度)に高圧ガス保安協会の設計承認の遅れによって装置開発が遅延し,2018 年度へ一部繰り越しを行うこととなったが,2018 年度以降に予定していた作業の前倒し等によって 2018 年度末までには全体として遅延を回復することができた.高速射出装置,自由飛翔試験部,観測システム,および処理ソフトウエアの開発も 2018 年度末までに予定通り概ね完了し,2019 年度の本格運用に向けた準備を完了することができた.
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今後の研究の推進方策 |
2018 年度までに完了した自由飛行試験装置とモーションキャプチャシステムを本格運用させ,実在気体効果に対して感度の高い様々な形態の模型を用い,各模型の飛行運動データを取得し,実在気体効果を含む空力特性を導出し,同試験結果に対する比較解析を行ってJONATHANの空力特性予測精度を検証し,またそれぞれの素過程が JONATHAN の予測する空力係数へ与える感度の分析を行うことで,個々の素過程の数学モデルを改善し,またシステム解析技術としての JONATHAN の空力係数の予測精度を改善する予定である.これらの一連の研究を通して,火星大気における極超音速飛行環境において,在気体効果の影響を反映した空力特性を高精度で予測することが可能な信頼性の高い数学モデルおよび数値流体解析技術を確立する.また 2019 年度は本研究の最終年度であるため,本研究の成果をとりまとめ,学術論文として投稿し,報告書を作成する.装置開発を含む過去3年間の成果の発信を積極的に行うこととして,国内会議における成果報告 5 件以上,国際会議における成果報告 3 件以上,学術論文 4 件以上を目標として掲げる. リスクとして,模型の画像が正確に取得できない,取得された画像から動的履歴が正確に取得できないなどの課題が想定されるが,既に数値シミュレーションと模擬画像を用いた評価を行っているため,リスク発生の確率は小さいと考えている.
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