船底への空気供給による船舶推進抵抗低減技術(空気潤滑法)の高度化の観点から、本研究では、海水中を含む外部流れの二相流を対象とした新しい二相流解析手法の構築を最終目的とした。 2019年度は、製作したモデル船を本学所有の回流水槽に設置して模擬船底下の二相流実験を行い、外部流れの二相流の局所流動パラメータ、流動様式マップおよび壁面摩擦抵抗に関するデータベースを構築した。模擬船底に形成する二相流の空間発達データを取得するため、実験装置を改造し、空気吹き出し方法と二相流計測部の位置を変更した実験を行った。これらの実験で得られたデータと昨年度までに取得された矩形流路内二相流の実験データを比較することで、外部流れの二相流の流動特性を明らかにした。さらに、海水中二相流の流動特性を評価するための静止液中気泡流実験を実施し、海水中二相流のモデル化や構成方程式の開発に必要となる気泡抗力係数と気泡の合一特性に関する実験データを取得した。 取得された実験データと解析結果に基づき、海水中を含む外部流れの二相流を対象とした二相流構成式の開発を試みた。船底を流動する外部流れは、チャネル内流れと異なり、幅方向と深さ方向の空間が無限となるため、流動パラメータの解析領域を決定する代表長さを新たに定義する必要があるが、本研究では、試験部流路幅と境界層厚さを代表の空間スケールとし、気泡に作用する乱流拡散力と浮力の影響を考慮した外部流れの二相流のボイド率予測式を新たに開発した。
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