研究課題/領域番号 |
17H03493
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
橋本 博公 神戸大学, 海洋底探査センター, 准教授 (30397731)
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研究分担者 |
松田 秋彦 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産工学研究所, グループ長 (10344334)
小野寺 直幸 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究職 (50614484)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 航海シミュレーション / 衛星AISデータ / 大規模粒子法 / GPGPU / 深層Q学習 / 荒天中操船 / 模型実験 / CFD |
研究実績の概要 |
海上輸送船舶の安全性向上を実現する次世代型の運航・操船支援システムを立案するために、今年度は以下のような研究を行った。 人工衛星で受信された膨大な船舶自動識別装置(AIS)データと波浪推算データを組み合わせた解析により、荒天時の船長の運航判断特性をモデル化し、この特性を昨年度に開発した船舶の大洋航行を再現する航海シミュレーションに組み込むことで、航海ルートの予測精度の向上を図った。そのうえで、衛星AISデータで得られた膨大な実航海データと同じ出発点、到着点を与えたシミュレーションを実施し、両者を統計的に比較検証することで定量的な評価を行った。その結果、荒天に対する船長の運航判断特性を導入することで、北太平洋、北大西洋ともに航海シミュレーション結果の実航海データとの相関向上が確認できた。 これと並行して、陽的粒子法とGPGPU(General-Purpose computing on Graphics Processing Units)を組み合わせた大規模粒子法にもとづき、水波特性の再現性の確認を経たうえで、船首冠水やプロペラ露出などを含む荒天時の船体挙動シミュレーションを実行可能とした。さらに、自航動力計と舵歪ゲージを備えたコンテナ模型船の波浪中曳航実験を実施し、空中露出を伴う荒天中でのプロペラ推力と舵力変動の計測を行った。また、波浪中での船体運動予測や操船性評価に必要となる波中航走時に船体に働く流体力並びに大振幅動揺時の横揺れ減衰力の非定常RANSシミュレーションによる推定を試み、模型実験との比較検証の結果、将来的に模型実験の代替としての使用が可能な精度にて予測が可能であることを確認した。 さらには、輻輳制約海域での他船との衝突を自動で回避するための操船支援を実現するために、深層強化学習として知られる深層Q学習にもとづく自動操船AIの開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
衛星AISデータから得られる膨大かつ客観的な実航海データと波浪推算データを組み合わせて解析することにより、これまで明らかにされていなかった荒天に対する運航判断特性の普遍的なモデル化を行い、これを航海シミュレーションに組み込むことで、十分に実用に耐える精度での運航ルート再現が達成された。これにより、次年度は年度初めから国際海事機関(IMO)にて暫定的に策定された運航制限や運航ガイダンスについての検討を行うことができる。 荒天中での操船評価シミュレーション開発については、2度にわたって模型実験を実施し、空中露出を伴うような極限的状況でのプロペラ推力及び舵力の変動の計測を行った。計測装置の一部不具合によりモデル化の作業が遅れているが、大きな問題はないと考えている。また、粒子法による船体運動シミュレーションについては、粒子法計算の大規模化と高速化に目途がついたことから、プロペラ推力と舵力の経験的モデルと組み合わせることで、次年度中に荒天中での操船評価が可能になると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに予期しなかったような問題は生じておらず、当初の計画通りに研究を進めていく。そのうえで、3年間の研究成果をまとめて、次世代の船舶運航・操船支援システム開発のための基礎を確立する。
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