研究課題/領域番号 |
17H03502
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大竹 翼 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (80544105)
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研究分担者 |
実松 健造 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (40462840)
申 基チョル 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 准教授 (50569283)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ニッケルラテライト / レアメタル / 超苦鉄質岩 / 化学風化 / 蛇紋岩 / クロム同位体 |
研究実績の概要 |
H29年度はインドネシア、スラウェシ島5サイトにおける風化断面の詳細な調査および試料採取を行った。5サイトは母岩の種類がダナイト、ハルツバージャイト、蛇紋岩などと異なる一方で、風化層の分布は浅部から赤色リモナイト、黄色リモナイト、サプロライト、原岩と同一であった。風化深度は10-30 mでサイトごとに異なり、化学風化の進展度が異なると考えられる。採取試料の化学組成分析の結果、全てサイトにおいて、原岩中の主成分であるマグネシウム、シリカは表層に向かって著しく枯渇する一方で、鉄、アルミニウム、チタンは表層に向かって増加する傾向を示した。ニッケルはダナイトを母岩とするサイトでは、リモナイト層中で最も高く、蛇紋岩化を原岩とするサイトでは、サプロライト層中で最も高い値を示した。また、移動性の低いチタンで規格化した物質移行量の計算から、全てのサイトにおいて鉄、アルミニウムはリモナイト層に、ニッケルはサプロライト層に付加されていることが分かった。5サイト中では、Petea Hillと呼ばれるサイトが最も風化層が厚く、また鉄、ニッケル共に付加量が最も大きいことから、化学風化が進展に伴い両元素が風化層に付加されていることが明らかになった。これらの結果は、Asia Africa Mineral Resources Conferenceで発表されたほか、H30年度の日本地球惑星科学連合大会やGoldschmidt Conferenceなどで発表予定である。 また、クロム安定同位体比の分析手法の開発を行った。まず溶解方法の検討を行い、難溶解性の試料についてはステンレスジャケットを用いた高温高圧分解法が最も高いクロム回収率を達成できることが分かった。さらに、分析条件の検討と脱溶媒装置、ダブルスパイク法を採用することで、標準試料の同位体比分析における分析精度を向上させることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画を概ね達成することができた。予定されていたインドネシアでの野外調査を行い、地球化学的条件の異なる複数の風化断面から試料を採取することがきた。また化学組成分析の結果、元素ごとに各風化層での濃集度が異なり、またその濃集の仕方はサイトによって異なることも明らかとなった。物質移行量の計算より、化学風化の進度と鉄の移行量、レアメタル濃集には関係があることが考えられ、計画段階の仮説が一部証明された。また、クロム同位体分析法の開発では、溶解条件、分析条件を検討することで、標準試料では分析が可能な状態となった。すでに天然試料の分析が可能となっている鉄同位体比測定については、本研究試料の分析に着手しており、レアメタル濃集と鉄同位体分別の関係性が明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
気候が異なり、化学風化の様式が異なることが期待されるミャンマーでの地質調査および試料採取を行う。化学組成、鉱物組成分析を行い、インドネシア試料との比較をすることにより、レアメタル濃集における気候や生成二次鉱物の違いの影響を検討する。また、インドネシア試料についてはクロム同位体分析に着手し、まずは現在の分析法で天然試料においても十分な精度が達成されているかを検討する。その後、化学風化の卓越している風化断面において鉄とクロム同位体の挙動を明らかにすることで、ニッケルラテライト鉱床におけるレアメタルの濃集要因とメカニズムについて明らかにする。さらに風化断面浅部におけるこれらの同位体指標を用いて、深部でのレアメタル濃集の予測が可能であるかを検討する。
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