研究課題
2020年度はミャンマーにおけるニッケルラテライト鉱床形成に関わる要因を明らかにするために、地理的条件および化学風化の程度が同程度にも関わらずニッケルが高濃集し鉱床となっているTagaung地域と鉱床となっていないBudaung地域に着目し、それらの鉱物学的および地球化学的分析を行った。両者の重要な違いとして母岩がBudaung地域は超苦鉄質岩が完全に蛇紋石化した蛇紋岩であるのに対し、Tagaungが部分的に蛇紋石化したハルバージャイトとであり、主要構成鉱物として蛇紋石に他にカンラン石および斜方輝石を含んでいる。分析の結果、両者の風化断面においてラテライト層で鉄よりもシリカが濃集していることが明らかになった。これはインドネシアのような高温多雨の気候で生成される風化プロファイルとは大きく異なっており、ミャンマーでは化学風化が卓越しにくいことが要因であると考えられる。また難溶解性元素であるチタンで規格化した物質移動量の計算では、鉄やニッケルの負荷量がインドネシアよりも低く、上記の要因と整合的であった。その一方で、Tagaungでは下部のサプロライト層においてNi濃度が3.2 wt%と高品位になっていた。前年度までの研究結果で、ミャンマーの風化層ではインドネシアなどとは異なりスメクタイトが生成していることが明らかになっていたが、ニッケル濃集との関係性については不明瞭であった。電子顕微鏡観察の結果、Tagaungの風化プロファイルに産するスメクタイト中のNi含有量は大きく異なり、サプロライト下部の一部のスメクタイトでは20 wt%程度までニッケルを含有するものが見つかった。これは風化速度が比較的遅い輝石由来のスメクタイトであると考えられ、母岩が完全に蛇紋岩化しておらず輝石が残存していることがミャンマーにおける高品位ニッケルラテライト鉱床形成の要因であることが明らかとなった。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Resource Geology
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