研究課題/領域番号 |
17H03504
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
渡邉 則昭 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (60466539)
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研究分担者 |
岡本 敦 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (40422092)
坂口 清敏 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (50261590)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 再生可能資源・エネルギー / 超臨界地熱資源 / 延性地殻 / 浸透率 |
研究実績の概要 |
母岩に貫入したマグマが地下水と接触し冷却・固結する過程で形成される超臨界水を包有するき裂性岩体からなる新しい地熱資源“超臨界地熱資源”および浅部の従来型地熱資源の規模や特性は,母岩および貫入岩の浸透率に大きく依存する。一方,浸透率は,脆性-延性遷移等の力学特性の変化や,流体の相変化にともなう高速・核形成型析出により激変する可能性が示唆されているが,詳細は不明である。そこで本研究では,室内実験を通じて岩石の力学特性の変化および流体の相変化が関与する浸透率挙動の支配方程式を導出し,超臨界地熱資源の時空間発展予測シミュレーションを通じて既存の熱水対流系の底近傍(超臨界地熱資源の一部)からその上部に存在する浅部熱水対流系の形成の再現に挑戦し,時空間発展予測法の可能性を明らかにすることを目的とする。 本年度の当初計画は昨年度に引き続き,き裂を有する花崗岩を用い,塑性条件下のき裂面溶解,流体の相変化による高速・核形成型析出およびき裂の非地震性せん断すべりのうち,既知の弾性条件下のき裂面溶解,結晶成長型析出および地震性せん断すべりと比較した場合,浸透率への影響に顕著な違いがある現象について,その影響を定式化するための室内実験を実施するというものであった。 塑性条件下のき裂面溶解に関しては,昨年度までに実験を終了し,き裂面の自由表面溶解および圧力溶解にともなう浸透率変化挙動の予測式を導出した。また本研究成果の国際学術雑誌上での公表も済んでいる。流体の相変化による高速・核形成型析出に関しても,本年度までに実験を終了し,アモルファスシリカ・ナノ粒子の形成にともなう浸透率変化挙動の予測式を導出した。また本研究成果の国際学術雑誌上での公表も行った。き裂の非地震性すべりに関しては本年度,実験を概ね終了し,き裂の非地震性すべりの浸透率への影響を定式化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では,本年度までに,塑性条件下のき裂面溶解,流体の相変化による高速・核形成型析出およびき裂の非地震性せん断すべりの三つの現象に関して,浸透率への影響を明らかにする計画であったが,ほぼ計画通りに研究が進展しているため。
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今後の研究の推進方策 |
来年度の当初計画は,岩石実験を通じて得られた高温延性地殻の浸透率の変化に関する支配方程式をソースコードが公開されているUSGSのHYDROTHERM等の既存シミュレータに組み込み,既存の深部掘削で得られた熱水対流系の底近傍(超臨界地熱システムの一部)からその上部に存在する浅部熱水対流系の温度や間隙水圧の再現を通じた,超臨界地熱資源の時空間発展予測法の基礎的検討を実施するとともに,必要に応じて補足実験を実施するというものである。 塑性条件下のき裂面溶解の浸透率への影響に関する室内実験を通じた検討を終了し,き裂面の自由表面溶解および圧力溶解にともなう浸透率変化挙動の予測式を導出している。また,流体の相変化による高速・核形成型析出の浸透率への影響に関する室内実験を通じた検討を終了し,同様の地熱環境に適用可能な,アモルファスシリカ・ナノ粒子の形成にともなう浸透率変化挙動の予測式を導出している。これらの成果に関してはすでに,国際学術雑誌上での発表が済んでおり妥当性も確認されているが,き裂の非地震性せん断すべりの浸透率への影響に関しては,室内実験を通じた検討を概ね終了し,浸透率変化挙動の予測式を導出してはいるものの,妥当性検証と国際学術雑誌上での発表が済んでいない。本年度は,この妥当性検証のための補足実験を実施して,国際学術雑誌上で発表を行うとともに,超臨界地熱資源の時空間発展予測法の基礎的検討を実施する。
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