研究課題/領域番号 |
17H03507
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊藤 悟 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60422078)
|
研究分担者 |
野上 修平 東北大学, 工学研究科, 准教授 (00431528)
田村 仁 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (20236756)
西島 元 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (30333884)
柳 長門 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (70230258)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | プラズマ・核融合 / 超伝導材料・素子 |
研究実績の概要 |
本研究では、核融合炉用分割型高温超伝導マグネットの保守・運用に向けて、1. 保全シナリオを考慮した接合技術の最適化、2. 高温超伝導線材へのクエンチ検出機能付加によるマグネット状態監視保全技術の開発、を行うことを目的とする。本年度の研究実績は以下の通りである。 1. 保全シナリオを考慮した接合技術の最適化: 機械的ラップジョイントの引張せん断試験・サイクル負荷試験を行い、サンプルをX線CTで観察することで、接合部の破壊モードを分析した。また、接合部の分離検討のために、常温~100℃程度での引張試験を行い、温度上昇とともに接合部分離が容易になるという指針を得た。分解時のシナリオ作りに向けて、実機導体の加熱を模擬した体系で温度分布を評価し、接合部分解をREBCO線材の臨界電流の低下なく行える指針も得ている。さらに機械的エッジジョイントにおける導体の安定化材厚さ、ジャケット厚さの増加による接合抵抗減少と導体巻き線時の曲げひずみの増加のトレードオフを数値計算と理論計算によって評価し、分割型マグネット導体設計の指針を得た。 2. 高温超伝導線材へのクエンチ検出機能付加によるマグネット状態監視保全技術の開発: REBCO導体・コイルの構造とセンサ配置がクエンチ検出機能に与える影響を数値計算で評価し、クエンチ検出システムの設計指針を得た。これを元に、REBCOパンケーキコイルにNbTiフィラメントクエンチ検出センサーを配置し、クエンチ検出の実証試験を行った。実証試験結果は、数値計算による予測と良好に一致した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 保全シナリオを考慮した接合技術の最適化、については、交付申請書に記載した内容に沿って、機械的ラップジョイントのサイクルロード依存性の評価、接合部分解の評価を進めることができたが、より詳細な分析が必要な状況にある。しかしながら、交付申請書には記載していなかった機械的エッジジョイントの構造が接合抵抗・曲げひずみに与える影響についても進めることができた。ドイツKITとの共同研究でKITのFBI Test Facilityを用いて導体接合部の引張試験を行う予定であったが、FBI Test Facilityの装置トラブルにより、実施は翌年度に持ち越すこととした。2. 高温超伝導線材へのクエンチ検出機能付加によるマグネット状態監視保全技術の開発、については、交付申請書に記載したREBCOパンケーキコイルのクエンチ検出実証実験を実施することができた。現状、NbTiセンサーのみの実証となっており、他の超伝導材料やセンサー形状の検討を進める必要がある。1、2を総合的に見れば、おおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
1) 保全シナリオを考慮した接合技術の最適化 引き続き、高温超伝導線材の機械的ラップジョイント(インジウム箔挿入)の引張試験、サイクルロード試験を液体窒素冷却環境で行い、接合部の電気機械特性を評価する。さらにヘリカル型核融合炉のヘリカルコイルをモデル化し、電磁力やサーマルサイクルの接合部への影響を、数値計算と実験結果から分析する。また、常温、加熱環境での引張試験、クリープ試験を行い、保管時・製作時の接合部特性の把握や接合部分解のシナリオ作りに取り組む。加えて、機械的エッジジョイントの数値計算による構造最適化、接合試験を実施し、着脱可能な分割型高温超伝導マグネットの概念設計の素案をまとめる。 2) 高温超伝導線材へのクエンチ検出機能付加によるマグネット状態監視保全技術の開発 LTSセンサの最適な構造(特に安定化材の抵抗率、有無)を検討し、最終的には高磁場でのクエンチ検出実証実験を行う。また、クエンチ位置特定技術の検討のために、複数電圧タップによるクエンチ検出検討、LTS導波ケーブルの導入検討も行う。さらに、高電流密度で運転される核融合炉用高温超伝導マグネットのクエンチ検出・保護を踏まえた状態監視保全技術の核融合炉への適用性評価を行う。
|