研究課題/領域番号 |
17H03508
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小川 雄一 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (90144170)
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研究分担者 |
日渡 良爾 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 六ヶ所核融合研究所 核融合炉システム研究開発部, 主幹研究員(定常) (40371348)
三善 悠矢 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 六ヶ所核融合研究所 核融合炉システム研究開発部, 任期付職員(任常) (50758638)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | プラズマ・核融合 |
研究実績の概要 |
本研究では、ディスラプション予知に焦点を当てた予測・予知制御の研究を進めている。ディスラプションを引き起こす要因を定性的・定量的に見極めるべく、第一原理やMHD方程式系をベースとした理論・シミュレーション研究が盛んに行われているが、ここではディスラプションに関する豊富な実験データに対して機械学習の手法を導入し、ディスラプションの予知を試みる事とした。
具体的には、JT-60U における高ベータプラズマ実験を対象とし、ディスラプションを起こした82ショットと、ディスラプションを起こさなかった安定な放電72ショットの合計154ショットを選んだ.また,予知に用いる候補変数として、プラズマ電流、規格化ベータ値、安全係数など10個のパラメータを選出し、それらの中の幾つかについては時間微分値も独立パラメータとして採用した結果、全部で17個のパラメータとなった。ただしこれら候補変数全てでディスラプションを予知することが目的ではなく,この候補変数の中から予知に重要な変数の組合せを自動抽出する手法の開発を目指した。次に、変数選択問題は,候補となる変数の中から分類に本質的な意味のある変数の部分集合・組合せを選択する必要があり、ここでは変数の組合せ全てについて網羅的に探索する手法である全状態探索法を採用した。具体的な機械学習手法の解析ツールとしては、サポートベクターマシン (SVM)を採用した。
予知精度の指標として,正しく発生を予知した割合と発生を誤報した割合を採用した。その結果、規格化ベータ値、グリーンワルド密度比、非円形度などを含む6~7個のパラメータの組み合わせが最もディスラプション予知の精度が高い事が見いだされた。これにより、機械学習手法を用いてディスラプション予知の可能性を示すと共に、ディスラプション物理に起因する主要な物理パラメータが抽出できる可能性の見通しが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ITERの炉心プラズマ制御に関して、最も重要な課題としてディスラプション制御が挙げられている。ディスラプションは、単に核融合炉出力が突然停止するのみならず、真空容器や炉内構造物に大きな機械的・熱的影響を及ぼす。ディスラプションの物理的メカニズムとして、電磁流体的な不安定性や炉心プラズマの熱的バランスの破綻などが挙げられており定性的な理解は進んでいるが、必ずしも十分制御できている訳ではない。そのため、ITERでは世界の研究者にディスラプションに関して、その物理機構解明、予測・予知および制御手法の確立、炉内機器への影響緩和などを中心とした研究および情報交換を呼び掛けている。
本研究では、グローバルな視点から核融合炉心プラズマの予測・予知制御を目指しているが、ディスラプションがITERでの緊急課題でもある点を鑑み、まずはディスラプション予知に焦点を当てた予測・予知制御の研究を進める事とした。ディスラプションを引き起こす要因を定性的・定量的に見極めるべく、第一原理やMHD方程式系をベースとした理論・シミュレーション研究が盛んに行われているが、本研究ではディスラプションに関する豊富な実験データに対して機械学習の手法を導入し、ディスラプションの予知を試みる事とした。その結果、規格化ベータ値、グリーンワルド密度比、非円形度などを含む6~7個のパラメータの組み合わせが最もディスラプション予知の精度が高い事が見いだされた。この成果は、ディスラプション予知の手法としてSVMを用いた全状態探索法が有効であると共に、ディスラプションを引き起こす物理パラメータの抽出も可能としているので、理論・シミュレーション研究と連携することによりディスラプション物理の機構解明に向けた研究にも有益である事が判った。
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今後の研究の推進方策 |
ディスラプション予知の手法としてSVMを用いた全状態探索法が有効である事が判ったので、今後は実験データの拡充と精査、および解析結果の評価手法などに研究を発展させてゆく予定である。具体的には、現在は内部インダクタンスや規格化ベータ値などのグローバルパラメータのみであるが、これに温度分布や安全係数分布などのプラズマ内部パラメータも加える。特に高ベータ実験では抵抗性壁モードが重要な役割を果たしているので、プラズマ回転のデータも組み込む。また予知精度は正しく発生を予知した割合と発生を誤報した割合の2次元空間でパラメータ化されるが、その結果から予知をどのように評価するかの評価手法についても検討を加える。
以上、SVMを用いた全状態探索法を活用して、ディスラプション予知の精度向上を目指すと共に、ディスラプション物理に関する研究の深化も図る。
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