研究課題
国際熱核融合実験炉(ITER)では,プラズマ対向壁面の大部分にベリリウムタイルの使用が予定されている.本研究では,プラズマ対向材料としてのベリリウム中の水素同位体挙動を定量的に評価するとともに,原子レベルでの組織観察を行い,微視的観点から現象のメカニズムを解明する事を目指している.平成31年度(令和1年度)は,研究期間の前半に構築した装置を改良し,大気曝露の影響を排除した条件でのイオン照射後の昇温脱離実験を実施し,実際の核融合炉環境下で予想される複合的条件下でのデータ収集を行った.さらに金属Beと比較して,熱的安定性に優れ,耐スウェリング特性が良好であることが知られているベリリウム金属間化合物(ベリライド)のプラズマ対向材料としての適用可能性を検討した.イオン照射後のTEM内昇温下その場観察の結果,ベリリウム中に形成したヘリウムバブルと重水素バブルには,その消失過程に明瞭な違いがあることが明らかになった.重水素バブルは,比較的低温でバブルから重水素が乖離し縮小消滅するのに対して,ヘリウムバブルにおいては,高温域までヘリウムの放出は観察されず,バブルそのものの表面への移動に伴うヘリウム放出が観測された.さらに,STEM-EELSを用いた分析においては,試料中の重水素,およびヘリウムの空間分布を1nm以下の分解能で評価することに成功した.また,混合プラズマに曝したベリライド試料からの重水素脱離ピークは,プラズマ中へのHeの混合により大きく減少することが示され,金属ベリリウムと比較しても,その水素保持量が1/2以下となることが示された.金属Beと比較した際のベリライド試料の低い水素保持量は,数keVオーダーの重水素イオン照射実験においても確認され,ベリライドの健全なプラズマ対向材料としての適応可能性が示唆された.
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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