加熱機構解明のためのサブテラヘルツ波散乱による電子バーンシュタイン波動の直接検出

2019 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 17H03514
• 研究機関: 核融合科学研究所
• 研究代表者: 久保 伸 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (80170025)
• 研究分担者: 立松 芳典 福井大学, 遠赤外領域開発研究センター, 教授 (50261756) ; 出射 浩 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (70260049) ; 斉藤 輝雄 福井大学, 遠赤外領域開発研究センター, 特命教授 (80143163)
• 研究期間 (年度): 2017-04-01 – 2022-03-31
• キーワード: 電子バーンシュタイン波 / サブミリ波ジャイロトロン / 散乱計測 / グレーティング / 準光学ビーム伝搬

研究実績の概要

九州大学のQUEST装置において、電子バーンシュタイン波動を検出するために、サブテラヘルツ(400GHz)帯ジャイロトロンを光源とする散乱計測を進めている。このために、令和元年度、福井大学で開発された400GHzジャイロトロンを試験運転し、移設を完了した。今後、散乱計測を実現するためには、ジャイロトロンからの出力から伝送モードへのモード変換器、伝送ミラー、入射、受信ミラー、QUESTのセンターポストに設置する予定のグレーティングミラーの開発が必要である。昨年度までに、グレーティングミラーの設計手法を開発し、センターポストに設置する具体的なグレーティング付保護板の設計を行った。引き続き、製作したグレーティングの性能評価を行うとともに、本設計手法を応用した、モード変換器等の伝送素子への応用も視野にいれた新たな伝送素子の開発にも着手した。また、実際の製作にあたっては、100ミクロン以下の金属板の微細構造作成が不可欠となり、その製作法の検討として多層エッチング薄板の圧接を検討しており、有望であることを確認した。新年度に試作品の作成を依頼する予定である。
また、このグレーティングミラー設計法に関する成果は、グレーティング表面構造を含めた電磁波散乱解析コードによる確認と適用範囲の明確化を行って論文にまとめる予定であり、現在そのためのコード開発とベンチマークを進めている。
QUEST装置の電子バーンシュタイン波動の励起の検討においては、これまでの幾何光学近似で行われていた計算では実際に励起される電子バーンシュタイン波動の伝搬予測までは可能であるが、電力密度（その広がり）までの検討は不可能である。それを可能とする拡張幾何光学（準光学）計算コードPARADE(本研究課題の成果の一部として完成)適用を検討している。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

散乱計測の源であるサブテラヘルツジャイロトロンの動作確認までは予定どおり進行したが、九州大学への移設および立ち上げが本研究課題以外の用務により大幅に遅れ、令和２年２月にようやく移設が完了した。しかし、３月に行う予定であったジャイロトロンの立ち上げが、新型コロナウィルスの拡大防止措置により、実行できなくなっている。九州大学でのサブテラヘルツジャイロトロンの運転が未だ実行できていない。その他の受信器の整備、準光学素子の開発はほぼ予定通り進んでいる。

今後の研究の推進方策

サブテラヘルツジャイロトロンの運転をし、大電力サブテラヘルツ波を用いて行う予定であった、グレーティングを含む準光学素子の開発は、すでに整備を進めている高感度受信機と高温熱源で行うことがある程度は可能であると考えられる。したがって、サブテラヘルツジャイロトロンの運転が開始されるまでに、可能な限り、準光学素子の開発を完了し、ジャイロトロン運転が可能となった段階でできる限り速やかに散乱計測システムの完成を目指すことで準備を進める。

研究成果

• [雑誌論文] Electron heating of over-dense plasma with dual-frequency electron cyclotron waves in fully non-inductive plasma ramp-up on the QUEST spherical tokamak (2020)
  • 著者名/発表者名: H. Idei, T. Onchi, K. Mishra, H. Zushi, T. Kariya, T. Imai, O. Watanabe, R. Ikezoe, K. Hanada, M. Ono, A. Ejiri, J. Qian, K. Nakamura, A. Fujisawa, Y. Nagashima, M. Hasegawa, K. Matsuoka, A. Fukuyama, S. Kubo, M. Yoshikawa, M. Sakamoto, S. Kawasaki, A. Higashijima, S. Ide, Y. Takase and S. Murakami
  • 雑誌名: Nuclear Fusion 巻: 60 ページ: 016030 1-13
  • DOI: 10.1088/1741-4326/ab4c12
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Quasioptical modeling of wave beams with and without mode conversion. I. Basic theory (2019)
  • 著者名/発表者名: I. Y. Dodin, D. E. Ruiz, K. Yanagihara, Y. Zhou, and S. Kubo
  • 雑誌名: Physics of Plasmas 巻: 26 ページ: 072110 1-20
  • DOI: 10.1063/1.5095076
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Quasioptical modeling of wave beams with and without mode conversion. II. Numerical simulations of single-mode beams (2019)
  • 著者名/発表者名: K. Yanagihara, I. Y. Dodin , and S. Kubo
  • 雑誌名: Physics of Plasmas 巻: 26 ページ: 072111 1-9
  • DOI: 10.1063/1.5095173
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Quasioptical modeling of wave beams with and without mode conversion. III. Numerical simulations of mode-converting beams (2019)
  • 著者名/発表者名: K. Yanagihara, I. Y. Dodin, and S. Kubo
  • 雑誌名: Physics of Plasmas 巻: 26 ページ: 072112 1-8
  • DOI: 10.1063/1.5095174
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Development of high power gyrotrons for advanced fusion devices (2019)
  • 著者名/発表者名: T. Kariya, R. Minami, T. Imai, M. Okada, F. Motoyoshi, T. Numakura, Y. Nakashima, H. Idei, T. Onchi, K. Hanada, T. Shimozuma, Y. Yoshimura, H. Takahashi, S. Kubo, Y. Oda, R. Ikeda, K. Sakamoto, M. Ono, K. Nagasaki, T. Eguchi and Y. Mitsunaka
  • 雑誌名: Nuclear Fusion 巻: 59 ページ: 066009 1-10
  • DOI: 10.1088/1741-4326/ab0e2c
  • 査読あり
• [雑誌論文] Isotope effects on energy, particle transport and turbulence in electron cyclotron resonant heating plasma of the Large Helical Device (2019)
  • 著者名/発表者名: K. Tanaka, Y. Ohtani, M. Nakata, F. Warmer, T. Tsujimura,,,, S. Kubo, et al
  • 雑誌名: Nuclear Fusion 巻: 59 ページ: 126040 1-13
  • DOI: 10.1088/1741-4326/ab4237
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Diffraction Patterns of the Millimeter Wave with a Helical Wavefront by a Triangular Aperture (2019)
  • 著者名/発表者名: Yuki Goto, Toru I. Tsujimura, Shin Kubo
  • 雑誌名: International Journal of Infrared and Millimeter Waves 巻: 40 ページ: 943-951
  • DOI: 10.1007/s10762-019-00614-z
  • 査読あり
• [雑誌論文] Development of the calibration method for a fast steering antenna for investigating the mode conversion window used in EBW heating in the LHD plasma (2019)
  • 著者名/発表者名: Yuki Goto, Shin Kubo, Hiroe Igami, Masaki Nishiura, Takashi Shimozuma, Yasuo Yoshimura, Hiromi Takahashi, and Toru Ii Tsujimura
  • 雑誌名: Japanese Journal of Applied Physics 巻: 50 ページ: 106001 1-7
  • DOI: 10.7567/1347-4065/ab3e58
  • 査読あり
• [雑誌論文] Oscillation Characteristics of a High Power 300 GHz Band Pulsed Gyrotron for Use in Collective Thomson Scattering Diagnostics (2019)
  • 著者名/発表者名: Teruo SAITO, Shunsuke TANAKA, Ryuji SHINBAYASHI, Yoshinori TATEMATSU, Yuusuke YAMAGUCHI, Masafumi FUKUNARI, Shin KUBO, Takashi SHIMOZUMA, Kenji TANAKA, Masaki NISHIURA
  • 雑誌名: Plasma and Fusion Research 巻: 14 ページ: 1406104 1-9
  • DOI: 10.1585/pfr.14.1406104
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Mode Purity of Electron Cyclotron Waves after Their Passage through the Peripheral Plasma in the Large Helical Device (2019)
  • 著者名/発表者名: Kota YANAGIHARA, Shin KUBO, Toru I. TSUJIMURA and Ilya Y. DODIN
  • 雑誌名: Plasma and Fusion Research 巻: 14 ページ: 1406104 1-9
  • DOI: 10.1585/pfr.14.3403103
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [学会発表] 電子サイクロトロン放射の渦性とその観測 (2020)
  • 著者名/発表者名: 久保 伸、後藤勇樹、辻村亨
  • 学会等名: 日本物理学会第75回年次大会
• [学会発表] 同トムソン散乱計測により得られた散乱スペクトルの速度空間再構成 (2020)
  • 著者名/発表者名: 西浦正樹，釼持尚輝，奴賀秀男，關良輔，久保伸，田中謙治，足立迅C，下妻隆，斉藤輝雄，Moseev Dmitry，Salewski Mirko，LHD実験グループ
  • 学会等名: 日本物理学会第75回年次大会
• [学会発表] Real-time injection control of electron cyclotron resonance heating power in LHD (2019)
  • 著者名/発表者名: T. Tsujimura, S. Kubo, T. Shimozuma, Y. Yoshimura, H. Igami, H. Takahashi, R. Yanai, K. Yanagihara
  • 学会等名: Topical Conference on Radio Frequency Power in Plasmas (2019)
  • 国際学会 / 招待講演
• [学会発表] Quasioptical simulations of electron cyclotron waves with and without mode conversion (2019)
  • 著者名/発表者名: K. Yanagihara,I. Dodin, S. Kubo, T. Tsujimura
  • 学会等名: 23rd Topical Conference on Radio Frequency Power in Plasmas
  • 国際学会
• [学会発表] Electron Bernstein wave detection using 400 GHz wave scattering in the QUEST (2019)
  • 著者名/発表者名: S. Kubo, H. Idei, T. Saito, Y. Tatematsu
  • 学会等名: 23rd Topical Conference on Radio Frequency Power in Plasmas
  • 国際学会