• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実績報告書

量子論に基づいたマルチスケール計算化学による原子炉冷却系腐食再汚染抑止の基盤研究

研究課題

研究課題/領域番号 17H03516
研究機関東北大学

研究代表者

畠山 望  東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 准教授 (50312666)

研究分担者 宮本 明  東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 教授 (50093076)
宮本 直人  東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 准教授 (60400462)
三浦 隆治  東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 助教 (00570897)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード防災 / 原子力エネルギー / シミュレーション工学 / 触媒・化学プロセス
研究実績の概要

(1)アノード分極曲線シミュレータの開発と応用
純金属に対して事前検討を進めてきたアノード分極曲線シミュレータについて,ステンレス鋼へと適用するための開発研究を行った.アノード電流密度の表式は,還元体の拡散を律速として,バトラーボルマー式に基づいて導出される.これに代入する各金属のイオン濃度は,アノード電極における各反応式に対してそれぞれ反応速度を設定し,時間発展偏微分方程式系として解くことにより得られる.この際,見かけの固液界面に垂直な一次元の分布を考え,酸化被膜領域については孔食による細孔構造の効果を取り入れることによって,実測をよく再現する時間発展アノード分極曲線を計算することがができる.(2)に述べる,メソスケール孔食腐食シミュレータとの連携が不可欠である.
ステンレス鋼へと拡張するには,不定比の複合酸化物の反応式を立てて解く必要がある.純金属のアノード分極曲線を再現するパラメータを基本にして,実際に原子炉冷却系配管材として使われるステンレス鋼の実測結果と比較しながら反応速度式を調整し,シミュレーションの精度を高めた.
(2)メソスケール孔食腐食シミュレータの開発と応用
界面における酸化被膜領域の細孔構造に関する物性パラメータが(1)のシミュレータには不可欠となってくるが,これを分子レベルで解析するには空間・時間スケールが大きすぎて計算困難であるため,より適したキネティックモンテカルロ(KMC)法を採用し,メソスケールの孔食腐食シミュレータを開発した.KMC法は,統計力学と確率過程論を基礎として,多くの事象を含む多体系の時間発展を解析する手段である.それぞれの事象に対して,それが生じる頻度すなわち遷移確率を設定し,乱数を用いてその頻度に従う時間発展を計算する.これをステンレス鋼の酸化被膜構造に適用し,結果を(1)に反映した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の予定通り,ステンレス鋼に対応するアノード分極曲線シミュレータの開発と応用研究を推進し,実際に原子炉条件におけるステンレス鋼腐食の実測結果と比較しうるシミュレーション精度が得られた.同時に,ステンレス鋼の酸化被膜構造に対するメソスケール孔食腐食シミュレータの開発と応用研究も順調に進んだ.さらに,次年度以降に予定していた炭素鋼への適用をすでに開始しており,量子分子動力学法による検討も進んでいる.

今後の研究の推進方策

(1)アノード分極曲線シミュレータの開発と応用
ステンレス鋼へと適用を進めてきたアノード分極曲線シミュレータについて,炭素鋼に対応するための開発研究を行う.アノード電流密度の表式は,還元体の拡散を律速として,バトラーボルマー式に基づいて導出される.これに代入する各金属のイオン濃度は,アノード電極における各反応式に対してそれぞれ反応速度を設定し,時間発展偏微分方程式系として解くことにより得られる.この際,見かけの固液界面に垂直な一次元の分布を考え,酸化被膜領域については孔食による細孔構造の効果を取り入れることによって,実測をよく再現する時間発展アノード分極曲線を計算することがができる.本年度は,新たな再汚染抑止技術であるニッケル被膜を表面に形成した炭素鋼に対して,これを適用する.
(2)メソスケール孔食腐食シミュレータの開発と応用
引き続き,キネティックモンテカルロ(KMC)法を採用したメソスケールの孔食腐食シミュレータを開発する.分子レベルで解析するには空間・時間スケールが大きすぎるという困難を克服し,(1)のシミュレータに不可欠な界面における酸化被膜領域の細孔構造を解析する.KMC法は,統計力学と確率過程論を基礎として,多くの事象を含む多体系の時間発展を解析する手段である.これをニッケル被膜形成炭素鋼の表面被膜構造に適用し,結果を(1)に反映する.
(3)貴金属を含む大規模電気化学反応ダイナミクス解析
貴金属ナノ粒子を被覆する影響を取り入れるためには,これによる腐食再汚染抑制メカニズムを分子レベルから理論的に解明するためのシミュレーションが必要になる.BWRにおける280℃程度の有限温度下での量子分子動力学法を行うには,UA-QCMDシミュレータが非常に有効である.本年度は,ニッケル被膜形成炭素鋼における貴金属ナノ粒子の被覆効果について解析を進める.

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] スキーワックス開発を高度化する計算化学と高精度計測2018

    • 著者名/発表者名
      畠山 望,岡島淳之介,岡部孝裕,宮本直人
    • 雑誌名

      化学工学

      巻: 82 ページ: 70-73

  • [雑誌論文] Graphene-Based Ordered Framework with a Diverse Range of Carbon Polygons Formed in Zeolite Nanochannels2018

    • 著者名/発表者名
      Hirotomo Nishihara, Hiroyuki Fujimoto, Hiroyuki Itoi, Keita Nomura, Hideki Tanaka, Minoru T. Miyahara, Patrick A. Bonnaud, Ryuji Miura, Ai Suzuki, Naoto Miyamoto, Nozomu Hatakeyama, Akira Miyamoto, Kazutaka Ikeda, Toshiya Otomo, Takashi Kyotani
    • 雑誌名

      Carbon

      巻: 129 ページ: 854-862

    • DOI

      10.1016/j.carbon.2017.12.055

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] なじみ・焼付きを解析可能なメソトライボロジーシミュレータの開発2017

    • 著者名/発表者名
      大串巧太郎,三浦隆治,鈴木 愛,畠山 望,宮本 明
    • 雑誌名

      自動車技術

      巻: 71 ページ: 83-88

  • [学会発表] 再循環系配管構造材のアノード分極シミュレーション2018

    • 著者名/発表者名
      畠山 望,三浦隆治,鈴木 愛,宮本 明,伊藤 剛,細川秀幸,佐々木麻由
    • 学会等名
      日本原子力学会2018年春の年会
  • [学会発表] すべり軸受の損傷におけるメソトライボロジーシミュレータの開発2017

    • 著者名/発表者名
      大串巧太郎,ボノー・パトリック,三浦隆治,鈴木 愛,宮本直人,畠山 望,宮本 明,梶木悠一朗,倉部陽平
    • 学会等名
      トライボロジー会議2017春 東京
  • [学会発表] Multiscale Modeling of Electro-Mechanical Coupling in Electroactive Polymers2017

    • 著者名/発表者名
      Ai Suzuki, Ryuji Miura, Nozomu Hatakeyama, Jean-Yves Cavaille, Gildas Diguet, Gael Sebald
    • 学会等名
      Fourteenth International Conference on Flow Dynamics
    • 国際学会
  • [学会発表] Molecular Simulation Analysis for Adhesion Mechanisms Involved in Polyethylene Processed by Cold Spray2017

    • 著者名/発表者名
      Yukie Ishizawa, Kenji Inaba, Ryuji Miura, Ai Suzuki, Naoto Miyamoto, Nozomu Hatakeyama, Akira Miyamoto, Kazuhiro Ogawa, Chrystelle Bernard, Jean-Yves Cavaille, Olivier Lame, Kesavan Ravi
    • 学会等名
      Fourteenth International Conference on Flow Dynamics
    • 国際学会
  • [学会発表] Molecular Simulation Study for Nano-Car Molecule on Au Surface2017

    • 著者名/発表者名
      Kenji Inaba, Yukie Ishizawa, Ryuji Miura, Ai Suzuki, Naoto Miyamoto, Nozomu Hatakeyama, Akira Miyamoto
    • 学会等名
      Fourteenth International Conference on Flow Dynamics
    • 国際学会
  • [学会発表] Simulation of Initial Conformability and Seizure on Tribo-Test Machine2017

    • 著者名/発表者名
      Kotaro Okushi, Patrick A. Bonnaud, Ryuji Miura, Ai Suzuki, Naoto Miyamoto, Nozomu Hatakeyama, Akira Miyamoto, Tomomi Honda
    • 学会等名
      World Tribology Congress 2017
    • 国際学会
  • [学会発表] 計算化学手法に基づくスキーワックスの開発と評価2017

    • 著者名/発表者名
      畠山 望,宮本直人
    • 学会等名
      日本化学会R&D懇話会
    • 招待講演
  • [図書] 触媒劣化-原因、対策と長寿命触媒開発-2018

    • 著者名/発表者名
      畠山 望,三浦隆治,鈴木 愛,宮本 明
    • 総ページ数
      295
    • 出版者
      シーエムシー出版
    • ISBN
      978-4-7813-1314-6
  • [図書] in silico創薬におけるスクリーニングの高速化・高精度化技術2018

    • 著者名/発表者名
      畠山 望,三浦隆治,鈴木 愛,宮本 明
    • 総ページ数
      540
    • 出版者
      技術情報協会
    • ISBN
      978-4-86104-688-9
  • [図書] 数値解析と表面分析によるトライボロジーの解明と制御2018

    • 著者名/発表者名
      畠山 望,大串巧太郎,三浦隆治,鈴木 愛,宮本 明
    • 総ページ数
      1192
    • 出版者
      テクノシステム
    • ISBN
      978-4-924728-80-6

URL: 

公開日: 2018-12-17  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi