研究課題/領域番号 |
17H03521
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤井 俊行 大阪大学, 工学研究科, 教授 (10314296)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ラマン分光分析 / 電気化学分析 / モリブデン / 硝酸 / オキシカチオン |
研究実績の概要 |
本研究は、核燃料物質及び核分裂生成物の廃棄物処理処分に関連する化学研究の一環として、液体中に存在するウラン及びモリブデンの原子価を電気化学的手法を用いて制御しながら、それらが形成する錯体をラマン分光分析法を用いて明らかにすることを目的としたものである。平成29年度はモリブデンに着目して研究を進めた。モリブデンは、使用済燃料を酸溶解した際に、不溶解性残渣と高レベル放射性廃液に分配する主要な核分裂生成物元素の一つである。高酸性度の硝酸溶液中においてはモリブデニルイオン(MoO22+42--3)という陽イオンとして存在する。酸性度が低くなるとモリブデン酸(MoO42-)、すなわち陰イオンとなるため、ウランイオンの対イオンとして振る舞うことがある。モリブデンの濃度が高くなると重合種やコロイドを生成するため、液体中のモリブデンの化学は複雑である。 モリブデン酸アンモニウム(含水)を硝酸に溶解することにより試料溶液を調製した。モリブデン濃度は1~100mmoldm-3(M)である。 電気化学測定法としてはサイクリックボルタンメトリ(CV法)を用いた。参照電極としては銀/塩化銀電極を、作用電極としてはパイログラファイト電極を、対極としては白金電極を用いた。
10mMのモリブデンを含む0.1M硝酸溶液を用いて、定電位電解による還元を行い、試料溶液の吸光分光分析及びラマン分光分析を行った。試料溶液は、無色透明から濃青色に変化し、400~850nmの波長領域に広域の吸光帯が観測された。ラマン分光分析においては、6価モリブデニルの分子振動起因である917cm-1及び946cm-1のラマンピークの減光を観測した。このことからMO(VI)錯体の分子構造は、モリブデンが還元することにより、変化することが示された。これらの研究成果により硝酸系に溶存するモリブデン錯体に関する分光電気化学分析の有効性が検証された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、ラマン分光電気化学分析システムの立ち上げに成功した。同システムを用い、モリブデンが溶存する試料溶液の分析に成功し、システムの有効性を検証した。
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今後の研究の推進方策 |
モリブデン試料に関する、ラマン分光電気化学分析を継続して行う。また、他のオキシカチオンについて、その錯生成を分析することが可能かを試行し、有効性を検証する。
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