研究課題
ダイヤモンド中のNV(Nitrogen-Vacancy)センターが持つ電子スピンの磁場・温度依存性をX線検出器の一種であるカロリーメータに応用するための研究を進めた。ダイヤモンドは、カロリーメータの設計上に優位な物性が他材料に比べて特異的に優れている。そのため、数Kで動作するカロリーメータが実現可能であると期待している。さらに、硼素添加ダイヤモンドは、その動作温度域が数Kであるため、ダイヤモンド遷移端温度計(TES)として利用できると考えている。本研究では、NVセンターの電子スピンを利用した「電子スピン型カロリーメータ」を目指し、平成30年度に以下の項目を実施した。(1)本課題目標を達成するためNVセンターを使った温度計測を利用する計画であり、昨年度は電子線照射によるNVセンター形成に取り組んだ。本年度はイオンビームによるNVセンター形成に取り組んだ。NVセンター単体であっても高感度計測が可能であるが、さらに高感度化するために量子もつれ状態を利用することを発案した。これを実現するため、3つのNVエンターが量子もつれ状態となり得る系の作製に成功した。(2)硼素添加ダイヤモンド結晶成長・加工を進め、スパッタSiO2薄膜を介したネガ型レジスト転写型電子線リソグラフィによる選択的酸素プラズマエッチング・選択的MPCVD成長による微細加工技術を確立し、超電導ダイヤモンド細線を作製することができた。(3)数Kで測定可能な共焦点レーザー走査型蛍光顕微鏡に対し、購入したPXI-FPGAモジュールを組み込み、高精度計測に不可欠なパルス光検出磁気共鳴システムを構築した。
2: おおむね順調に進展している
低温でのパルス光検出磁気共鳴計測システムが出来上がり、検証実験を着実に進められるようになってきた。ダイヤモンドTESの作製に関しても、微細加工技術により当初の計画にあったサイズの超電導素子が開発できつつあり、順調に研究が進んでいると考えている。また、当初予期していなかった研究成果として、双極子双極子相互作用する3つのNVセンターを作製することに成功した。量子もつれ状態を使うことで高感度の温度計測が可能であるかの検証を進める考えである。
硼素添加ダイヤモンドを用いて作成したダイヤモンドTESの温度依存性を取得し、その性能を評価することを続ける。低温下においてダイヤモンドNVセンターのパルス光検出磁気共鳴測定を実施する。X線もしくはα線をNVセンターにて検出することを試みる。
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The Journal of Physical Chemistry C
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