研究課題/領域番号 |
17H03531
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小宮山 涼一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (60537819)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エネルギーシステム / 電力システム / 最適化 / リスク分析 |
研究実績の概要 |
全国の実在する全ての基幹系統を352ノード、441本の送電線でモデル化して拡張を行った大規模最適電源構成モデルを開発し、太陽光・風力発電の大量導入下での数値シミュレーション分析を行った。モデル構築の基盤として線形計画法を用い、目的関数を系統全体の年間総発電費用とし、その最小化によりメリットオーダーに基づき経済合理的な最適需給運用を決定することを可能とした。制約条件は同時同量制約、設備容量制約、供給予備力制約、負荷追従制約、最低出力制約、電力貯蔵制約、送電制約等を考慮している。また、時間解像度は1時間値とした。シミュレーション結果より、352地点の年平均電力価格を分析すると、再エネ余剰電力の影響により、北海道や東北,九州では電力価格は相対的に低くなり、その結果、同地域でのLNG複合火力等の収益性が低下する可能性があることを定量的に示した。 また、太陽光、風力発電の出力変動には大きな不確実性が存在するため、それらの出力変動を明示的に考慮に入れた最適電力需給運用モデルを、確率動的計画法に基づき構築し、分析を実施した。その結果、再エネ出力変動の不確実性を考慮したことで、揚水式水力発電の運用に違いが見られ、再エネ発電出力が急減する場合に備えて、余分に電力貯蔵量を確保するといった挙動を定量的に確認できた。これにより、再エネ出力変動の考慮は、実用的な電源の需給運用を分析する上で、重要な役割を担うことが示唆された。 そして日本のエネルギー部門全体を対象として、特に電力部門の構造を詳細化した最適化型エネルギーモデルを構築し、CO2排出制約の下でのエネルギーベストミックスの分析や原子力のシナリオ分析を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本の最適電源構成モデル構築に関しては、日本の実在する母線、基幹系統を全て考慮したモデルを完成することができた。今後、査読付論文への投稿、電力技術に関する様々なシナリオ分析を実施する。 確率動的計画法によるリスク分析に関しても、再エネ出力変動の不確実性を考慮した最適電源需給運用モデルを構築し、有意な分析結果を得ることができた。今後、同じく、査読付論文への投稿を準備すると共に、コージェネレーションシステム等の分散型電源のBCP価値への確率動的計画法の適用について検討を進める。 またエネルギー部門全体を対象とした世界、日本のエネルギーモデルの構築に関してもモデル構築を進めている最中ではあるが、特に日本のエネルギー需給モデルに関しては、電力部門を詳細化したモデル構築を完成し、既に査読付雑誌への投稿を進め、掲載決定となっている。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗を踏まえ、最適電源構成モデルや日本のエネルギー需給モデルに関しては、モデル構造の詳細化を進める。確率動的計画法の分散型電源の分析への適用や、世界を対象としたエネルギーモデルに関しても、モデル構築の完成を目指す。
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