最終年度は電力システム、および、世界的なエネルギーシステムの観点より、エネルギー安全保障や安定供給に関する評価を実施した。電力システムの観点からは、分散型電源であるコージェネレーションシステム(CGS)が再生可能エネルギー大量連系時における電力安定供給への貢献可能性を分析した。前年度において構築した日本の352母線、441本の送電線からなる大規模最適化型電力需給モデルに、CGSを考慮してモデルの拡張を行い、分析の結果、太陽光や風力といった再エネ出力が大幅に低下する時間帯では、CGS下げDR(CGS出力増加)が発動される一方、再エネ出力が大幅に増加する時間帯においては、CGS上げDR(CGS出力抑制)が発動され、再エネの経済効率的な大量導入に、分散型電源が貢献する可能性をシミュレーションすることができた。また、線形計画問題として世界エネルギーシステムを構築し、世界のエネルギー貿易のリスクについて分析を実施した。分析期間を2050年までとして、世界のエネルギー貿易を363の節点を有するネットワークとして表現し、世界142ヵ国のエネルギー需給を明示的に分析可能とした。輸送可能品目は計7品目(高品位炭、天然ガス、原油、水素、メタノール、電力、CO2)として、陸上輸送、送電、海上輸送の3通りを考慮している。本モデルの変数は約1.3億個、制約式は約2.0億本の規模となっている。このモデルを用いて世界全体にCO2制約を課して最適化計算を実施した結果、電力貿易が一部の国で再エネ送電用に拡大し、国際的な電力需給、電力貿易に大きな影響を及ぼし得ることが分かった。以上のシミュレーション分析結果は、エネルギー安定供給やエネルギー安全保障政策立案に資するものと考えられる。
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