今年度は多接合型デバイスのシミュレーション(東工大)と禁制帯幅の大きなペロブスカイト材料(CsPbBr3、CH3NH3PbBr3)を用いた受光器の開発(新潟大、東工大)に重点を置いて研究を進めた。また、多接合化のための基礎技術の開発を行った。シミュレーションにおいては、2接合型デバイスの最適設計を行い、CsPbBr3を光吸収層に用いた場合のトップセルとボトムセルに必要な膜厚を決定した。また、CuIが2つの受光器の接続部分となるトンネル接合層の材料として有望であることを明らかにした。さらに、現状のデバイスの詳細な解析を行い、光吸収層であるCsPbBr3層中の正孔輸送層(P3HT)との界面付近に欠陥の多い層が存在することを示唆する結果を得た。 受光器の作製においては、東工大・新潟大共にTiO2を電子輸送層に用いたワイドギャップペロブスカイト受光器の特性評価を行った。ソーラーシミュレータを用いた評価を行い、疑似太陽光下でエネルギー変換効率6.6%程度のデバイス(CsPbBr3を使用)が形成できている。青色LEDを用いた単色光下での測定を行い、22.5%の変換効率を得た。開放電圧はLED照射高強度の増加に伴い増加し、1.5 Vを超える値が得られた。ただし、出力電圧と電流ともに理論計算値よりまだ小さいため、更なるCsPbBr3層の欠陥低減が必要であるとの知見を得た。また、2接合デバイスの作製においては、有機系の正孔輸送層(P3HT)の熱耐性が問題となるため、無機系材料であるCuIについての検討を行った。しかし、CuIを正孔輸送層に用いたデバイスは特性が悪く、良好な2接合デバイスの形成には至らず、正孔輸送層の更なる探索が2接合化における最重要課題であることが明らかとなった。
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