研究課題/領域番号 |
17H03534
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
松本 宏一 金沢大学, 数物科学系, 教授 (10219496)
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研究分担者 |
沼澤 健則 国立研究開発法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他研究員 (30354319)
阿部 聡 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (60251914)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 水素 / エネルギー効率化 / 熱工学 |
研究実績の概要 |
本研究は、冷凍システムを抜本的に改良し、エネルギー効率の極めて高い水素の液化や保持技術の実証・確立を目的としている。本年度は、1.新たな冷凍サイクル試験装置の構築 2.水素磁気冷凍用の新規磁性材料の開発を行った。 1.冷凍試験システムの構築:本年度は磁気冷凍サイクル実証のための試験冷凍システムの構築を行った。構築した蓄冷型サイクル運転システムはソレノイド型マグネットとAMRの往復動による磁場変化を基本構成とした。熱交換媒体はガスの確実な移動と流量調整範囲の大きさを検討した結果、ヘリウム外部圧縮機を利用する形式を採用した。マグネットシステムは、物質・材料研究機構に既設の伝導冷却超伝導マグネットを利用することとした。マグネットは永久電流モードで運転し、磁性体への磁場変化は磁性体をアクチュエーターで引き抜き、挿入することで行う。事前の解析でシャトル熱流入が性能に大きな影響を与えていることが分かった。十分な断熱設計を行った結果、ベローを用いた軸シール等を用いた新方式を採用した。磁性体駆動機構は、カルノーサイクル磁気冷凍水素液化段の試験で用いられた物材機構所有の電動アクチュエーターを流用することで開発時間とコストを軽減した。 2.新規磁性材料の開発:水素磁気冷凍用磁性材料として、水素と直接触れても化学反応を起こさない希土類酸化物ガーネットや大きな磁気熱量効果が得られる希土類金属間化合物を中心に磁気熱量効果を評価し、有望な材料を開発してきた。今年度は新たな酸化物磁性体の開発を行った。共同研究者であるロシアカザン連邦大学で育成された単結晶を用いて、特性評価を行った。その結果、ガーネット系材料より単位体積当たりの磁気熱量効果が大きく、金属間化合物に近い特性が得られることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、新たな冷凍サイクル試験装置の構築と水素磁気冷凍用の新規磁性材料の開発を行った。 冷凍試験システムの構築に関しては、申請計画では新規に超伝導マグネットの購入を申請していたが、配分金額が不足していたため、計画を変更して物質・材料研究機構に既設のマグネットを利用する計画とした。このため、システムの設計に大きな変更が必要になったが、様々な検討を行い、十分試験を実施可能なシステムの構築を行った。従って、おおむね順調に進展している。
新規磁性材料の開発に関しては、今年度は新たな酸化物磁性体の開発を行った。共同研究者であるロシアカザン連邦大学で育成された単結晶を用いて、特性評価を行った。その結果、ガーネット系材料より単位体積当たりの磁気熱量効果が大きく、金属間化合物に近い特性が得られることを明らかにした。従って、計画以上に進展していると言える。 総合的に、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に構築した試験冷凍システムを用いて、蓄冷サイクルの実証試験を行う。磁性体については、これまでの研究や予備実験により、希土類の置換や非磁性元素の置換により磁気転移温度やエントロピー変化の制御が可能であると知見を得ている RT2(R:希土類Gd,Dy,Er,Ho T:Ni,Al)系の金属間化合物から試験を実施する。また、磁気熱特性を明らかにし大きな磁気熱量効果が期待されている一次相転移する磁性体RCo2系材料を用いて試験を行う。これまでの我々の研究で金属間化合物の希土類元素置換等により主な磁気転移を水素磁気冷凍で求められる10K~150K程度の範囲で変化できること、逐次相転移を利用する場合は二つの磁気転移の温度間隔を少なくとも10K程度で制御可能である結果を得ている。さらに、20Kから77Kまでのすべての温度範囲で大きなエントロピー変化を実現することが磁性体の特性上、困難であることが知られているため、単一の磁性材料での特性解明後は複数の磁性体の複合化、AMR内部の磁性体の多層化で特性向上を図る。 新規磁性材料の開発:水素磁気冷凍用磁性材料として、新たに見いだされた酸化物磁性体の相転移温度の制御と最適化に取り組む。
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