研究課題/領域番号 |
17H03541
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
河崎 洋志 金沢大学, 医学系, 教授 (50303904)
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研究分担者 |
田嶋 敦 金沢大学, 医学系, 教授 (10396864)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 大脳皮質 |
研究実績の概要 |
ヒトなどの高等哺乳動物の大脳皮質の表面にはシワ(脳回)が存在する。脳回の獲得により大脳皮質により多くの神経細胞を持つことが可能になったと考えられている。しかしマウスの大脳皮質には脳回はなく、マウスを用いた解析が困難であることから、脳回の形成原理および脳回の重要性の解析は著しく遅れている。そこで我々は脳回を持つ高等哺乳動物フェレットに着目し、独自の分子遺伝学的解析技術を確立してきた。フェレットで遺伝子機能を解析するために、子宮内エレクトロポレーションを応用しフェレットの大脳皮質での遺伝子発現を可能とした。この技術を用いて本年度は、脳回形成に重要なシグナルを探索し、FGFシグナルが脳回形成に必須であることを見いだした。優性不能型FGFをフェレット大脳皮質に導入したところ脳回形成が抑制された。さらに神経前駆細胞数も減少していたことからFGFが神経前駆細胞の分裂を促進して脳回形成につながることが示唆された(eLife 2017)。さらに脳回形成に重要となる細胞生物学的プロセスを検討したところ、大脳皮質表層への細胞の移動が重要であることを発見した(Cell Reports 2017)。また脳回形成異常疾患フェレットを用いて、希少疾患の病態解析を行った(Human Molecular Genetics 2018)。我々の技術を用いることにより、脳回形成の分子機構およびその異常疾患の病態のいったんが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
脳回形成の分子機構を探索し、FGFシグナルが重要であること、表層神経細胞への細胞移動が重要であることを明らかにすることができた。これまでに脳回形成に関わる分子機構は実験的にはほとんど明らかになっておらず、先駆的な成果と言える
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今後の研究の推進方策 |
これまでに脳回形成に関わる分子機構の一端を明らかにすることができたことから、現在の方針をさらに推し進め、本年度はフェレットの大脳皮質形成期に発現する遺伝子の同定を行う。さらに同定した遺伝子の機能阻害を行い、脳回形成における機能的重要性を検討する。脳回に異常が見られた場合は、神経前駆細胞マーカー、細胞分裂マーカーなどを用いて大脳皮質に生じている表現型を解析することにより、脳回形成の分子機構をさらに解明する。
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