研究課題
1)苔状線維活動の可視化による運動情報の解読:苔状線維特異的にG-CaMPを発現するマウスを用い、 前肢によるレバー引き課題実行中の苔状線維活動を観察した。レバー引き運動にともなって、活動が増加するもの、減少するものなど様々なパターンの活動を示す苔状線維終末があることが明らかとなった。運動を開始する直前から活動が見られる終末は、運動指令の遠心性コピーまたは運動前の前肢の状態を伝える感覚フィードバックであると考えられた。一方で、レバー引き運動とは時間的にみて直接関わりがなくむしろ報酬を受取るタイミングで活動を示すものも観察され、これは、最近報告のあった、報酬関連活動を示す顆粒細胞に入力する苔状線維であると考えられる。また、これらの活動パターンの異なる苔状線維がどのような空間分布を示すかを調べたところ、明らかな機能的クラスターは見られておらず、顆粒細胞においてこれらの異なる情報が統合されている可能性も考えられる。2)苔状線維と登上線維の活動同時可視化による運動情報と誤差情報の相互作用解明:運動情報や運動指令を伝えていると考えられる苔状線維と誤差情報を伝えていると考えられている登上線維の相互作用を明らかにするため、蛍光波長の異なる2つのGECIによって苔状線維入力と登上線維入力を同時に可視化する実験を行った。苔状線維の活動を可視化するThy1-G-CaMPマウスは、発現マーカーとして赤色蛍光タンパクを同時に発現しているため、緑赤同時活動イメージングは困難であった。そこで、ウィルスベクターを用いて顆粒細胞およびプルキンエ細胞特異的にそれぞれ緑、赤のGECIの発現を試みたが、ウィルスのセロタイプの組み合わせや発現プロモーターの活性などにより、同時に活動を観察するためのさらなる条件検討が必要であった。
2: おおむね順調に進展している
登上線維と苔状線維の同時計測については、さらなる条件検討が必要であるが、レバー引き運動課題実行中の苔状線維活動について、新たな知見が得られておりおおむね順調に進んでいる。
レバー引き運動中の苔状線維活動についてデータ収集を継続し解析を進めるとともに、登上線維活動と苔状線維活動の同時計測について、条件検討を完了した上で実験を進める。
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