研究実績の概要 |
切断された神経軸索の再生機構の解明は、神経損傷により起こる感覚障害や運動障害の治療に繋がることから、学術的にも社会的にも喫緊の課題である。研究代表者はC. エレガンスをモデル動物として、軸索再生を制御する因子を網羅的に探索した結果、これまでに92個の候補遺伝子(svh遺伝子)を同定し、その一部を解析することで多くの知見を得てきた。本研究ではそれを土台にした上で、軸索再生を制御する遺伝子候補として同定されたsvh-6, 7, 9, 10, 11, 12 および14 以降のsvh 遺伝子について解析を進めている。今年度は、その一つであるsvh-14について詳細な解析を行った。SVH-14は哺乳動物の転写因子Maxの線虫ホモログである。これまでの解析から線虫のSVH-14はMADホモログMDL-1と複合体を形成し、寿命に対して負に作用することが報告されている。しかし我々の解析では、MDL-1は神経軸索再生に必要ではなかったことから、SVH-14は未知の因子と複合体を形成して神経軸索再生を制御することが推測されていた。そこで今回、酵母ツーハイブリッド法を用いて、SVH-14に結合する因子の探索を行ったところ、すでにSVH-14に結合することが知られているMDL-1に加えて、これまで報告のない新規の結合因子を複数同定することができた。そのうち、結合因子YについてCRISPR-Cas9法による遺伝子欠損変異体の作成を試みたところ、その第3エキソンを8塩基欠損したことによりフレームシフトを起こした変異を単離することができた。
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