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2019 年度 実績報告書

生後発達期神経回路再編成における神経活動の機能的意義の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17H03551
研究機関広島大学

研究代表者

橋本 浩一  広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (00303272)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード下オリーブ核 / 登上線維 / 小脳
研究実績の概要

成熟動物の小脳プルキンエ細胞は1本の登上線維により単一支配されているが、生後直後には複数の登上線維により多重支配を受けている。マウスでは生後3週の間に過剰な登上線維が刈り込まれ、単一支配に移行することが知られている。この登上線維の刈り込みの機序と、登上線維起始核の下オリーブ核の機能的成熟との関連を明らかにすることが研究の主な目的となる。平成30年度までに、ミクログリアが抑制性シナプスの成熟を介して登上線維の刈り込みに関与することを報告した。ミクログリアによる抑制性シナプス発達制御の機序を明らかにするため、抑制性シナプスの周囲を覆うperineuronal netに着目し、生後発達変化をWFAによる染色を通じて形態学的解析に着手した。生後8日前後の小脳でWFAによる染色像がクラスター状の分布を示す結果が得られ始めている。また、下オリーブ核の周期的活動に重要な電気的膜特性と考えられているresonance特性に必須な要素の一つとして、Kv11.3(Kcnh7)の解析を行った。Kv11.3の特異的抗体を用いて組織学的解析を行ったところ、Kv11.3はニューロンの樹状突起上にクラスター状に分布しており、同じくresonance特性に必須なHCN1チャネルと同様な分布を示すことが分かった。また、昨年度来作出を進めていたKv11.3ノックアウトマウスを解析し、下オリーブ核のresonance特性が消失していることが明らかになった。このことは、Kv11.3ノックアウトマウスが、下オリーブ核において閾値化膜電位オシレーションが消失したモデルマウスとして使用可能であることを示唆する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

登上線維の刈り込みにおける機序の解明の成果として平成30年度に成果を公表し、さらに今年度は下オリーブ核のresonance特性におけるKv11チャネルの関与を解析した論文を現在投稿中である。よって進捗は順調であると考える。

今後の研究の推進方策

令和元年度の解析から、perineuronal netが生後発達変化を示す可能性が示唆された。Perineuronal netは抑制性シナプスの周辺を取り囲んで入力するシナプスの形成に影響を与える可能性が考えられるため、本年度はperineuronal netがプルキンエ細胞への抑制性シナプス入力の発達に与える影響を解析する。まず観察されたクラスター状のWFA染色が存在する組織学的構造を明らかにするため、抑制性シナプス終末(VGAT)との共染色を行う。また、プルキンエ細胞からホールセル記録を行い抑制性シナプス伝達の発達変化を解析し、この過程におけるperineuronal netの分解酵素投与(bacterial enzyme chondroitinase ABC)の影響等を解析する予定である。また、ミクログリアがperineuronal netの分解・維持にかかわる可能性を検証するため、小脳皮質からミクログリアが消失したマウスを用いて解析を行う。さらに、令和元年度の解析からKv11.3ノックアウトマウスが下オリーブ核の閾値化膜電位オシレーションが消失したマウスであることが明らかになったため、このマウスを用いて登上線維の刈り込みの以上の有無を解析する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] mGluR1 in cerebellar Purkinje cells is essential for the formation but not expression of associative eyeblink memory.2019

    • 著者名/発表者名
      Nakao H, Kishimoto Y, Hashimoto K, Kitamura K, Yamasaki M, Nakao K, Watanabe M, Kano M, Kirino Y, Aiba A.
    • 雑誌名

      Sci Rep.

      巻: 9 ページ: 7353

    • DOI

      10.1038/s41598-019-43744-z.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Mechanisms for the resonant property in rodent neurons.2019

    • 著者名/発表者名
      Kouichi Hashimoto
    • 雑誌名

      Neurosci. Res.

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1016/j.neures.2019.12.013.

    • 査読あり
  • [学会発表] 体性感覚の小脳へのsimple spikeを介した信号伝達経路2020

    • 著者名/発表者名
      久保怜香、橋本浩一
    • 学会等名
      第25回グリアクラブ
  • [学会発表] 下オリーブ核のオシレーションの発生機序2019

    • 著者名/発表者名
      橋本浩一
    • 学会等名
      第34回 日本大脳基底核研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] 神経細胞のresonance特性におけるKv11チャネルの関与2019

    • 著者名/発表者名
      松岡 利典, 山崎 美和子, 阿部 学, 松田 由喜子, 森野 豊之, 川上 秀史 , 崎村 建司, 渡辺 雅彦, 橋本 浩一
    • 学会等名
      次世代脳プロジェクト冬のシンポジウム2019
  • [学会発表] Degeneration of cerebellar Purkinje cells in the knock-in mice harbouring SCA42 mutation2019

    • 著者名/発表者名
      Matsuda Y, Morino H, Kurashige T, Nakayama H, Matsuoka T, Sotomaru Y, Hashimoto K, Kawakami H.
    • 学会等名
      第42回日本神経科学大会
  • [備考] https://home.hiroshima-u.ac.jp/physiol2/

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公開日: 2023-12-25  

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