研究課題/領域番号 |
17H03553
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
田中 雅樹 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80264753)
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研究分担者 |
渡邊 義久 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50363990)
辻村 敦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50236890)
田口 勝敏 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60462701)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | オートファジー / 遺伝子改変マウス / NPYニューロン |
研究実績の概要 |
オートファジーは細胞内タンパク質分解機構の一つで神経変性疾患などへの関与が知られているが、本研究ではストレス・情動系へのオートファジー関与をストレスモデル、遺伝子改変マウスを用いて明らかにすることを目的とする。平成30年度はオートファジーの活性化をモニターするレポーター遺伝子が神経細胞特異的に発現するGFP-LC3-RFP-LC3ΔGマウスを3系統作製した。初代海馬培養神経細胞にラパマイシンを投与してオートファジーを起こさせて顕微鏡観察したが、コピー数が少ないためかGFPとRFPの発現がかなり弱く、蛍光でなかなか観察できなかった。またストレス負荷と脳内オートファジーの関連性を調べるためにフットショックによるモデルマウスの作製を行い脳組織で、抗GFP抗体と抗RFPを用いて免疫組織化学染色で脳内のオートファジー活性を調べたが、ともに発現が弱く、免疫組織化学染色によるオートファジー活性の正確な測定は困難であった。そのため新たに5系統(GFP-LC3-RFP)のトランスジェニックマウスを作製した。今年度はこの5系統をスクリーニングしてオートファジー活性化をモニターできるかを確認した後、ストレス・情動に関わる脳領域でオートファジーfluxによる活性化を組織・細胞レベルで解析する。 うつ様行動における側坐核NPYニューロンの役割を解析するために、DREADDテクノロジーを用い側坐核NPYニューロンの活性化を行った。NPY-Creマウスの側坐核でAAVウイルスを用いhM3Dデザイナー受容体を発現させ、clozapine-N-oxideの腹腔内投与により側坐核NPYニューロンの活性化を行うと、その後、オープンフィールド試験で中心部滞在時間の増加傾向と、高架式十字迷路試験、オープンアームの滞在時間の増加傾向が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度神経特異的なオートファジー活性を測定するためのレポーターシステム(GFP-LC3-RFP-LC3ΔG)を発現したマウスを3系統作製し、実際にin vitro, in vivo でオートファジーを細胞レベルで可視化できるか、詳細な検討を行った。しかしながら、いずれの系統のマウスも遺伝子発現が弱く、解析に耐えられないと判断し、年度途中より新たにGFP-LC3-RFP マウス作成を開始し、年度終了時に5系統作製できた。2019年度はこのマウスを用いたストレスモデルのオートファジー解析を行う予定である。その間NPY-Creマウスを用いた情動モデルの検索も同時並行で行っている。
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今後の研究の推進方策 |
1.新たに作製した5系統のGFP-LC3-RFPマウスに対して、脳内でのオートファジー活性を測定する。まず、レポーターシステムの確認のために海馬神経細胞初代培養系を作製し、オートファジー活性化剤であるラパマイシンを投与して緑色と赤色の比率が変化するのを可視化できるのかを確認する。一番強い緑色及び赤色を発現する系統を用いて次にマウス脳内にラパマイシンをインジェクションして局所にオートファジーの活性化が可視化できるかを、蛍光抗体を用いた組織化学法で確認する。さらにオートファジー阻害剤であるクロロロキンも脳内に注入し、神経細胞でオートファジーの抑制が起きるかを確かめる。 2.GFP-LC3-RFPマウスを用いてストレスによる脳内オートファジー活性の変化を調べる。具体的には、拘束ストレス(8時間)やフットショックストレス(0.4mA, 4回)を受けたマウスを4%パラホルムアルデヒドで固定を行い、作製した脳切片の扁桃体、側坐核、海馬、視床下部等の神経でのオートファジー活性の変化を観察する。さらに、一過的なストレス以外にも社会敗北型ストレスモデルや慢性疼痛モデルも作製し同様の解析を行う。 3.情動・摂食に関与する神経ペプチドNPYは生体のエネルギー状態に応じてオートファジーを起こすことが報告されている。我々はNPY特異的にCreを発現するマウスを飼育しており、NPY-CreマウスとGFP-LC3-RFPマウスを交配し、NPYニューロンを、DREADD法を用いて特異的に刺激した時にオートファジーが起こるかを脳内でモニターする。
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