研究課題
オートファジーは細胞内タンパク質分解機構の一つで神経変性疾患などへの関与が知られているが、本研究ではストレス・情動系へのオートファジー関与をストレスモデル、遺伝子改変マウスを用いて明らかにすることを目的とする。令和1年度は昨年度新たに作成した5系統(GFP-LC3-RFP)のトランスジェニックマウスについてオートファジー活性化をモニターできるかをスクリーニングしようとした。しかし繁殖に時間がかかり、ようやくヘテロ段階で1系統にGFP、RFPの軽度発現がみられた。今年度はこの系統のホモマウスを作成してオートファジー活性を、初代培養細を作成して確認した後、ストレス・情動に関わる脳領域でオートファジーfluxによる活性化をモデル動物を作製して組織・細胞レベルで解析する予定である。側坐核NPYニューロンの情動行動に果たす役割を解析するために、NPY-CreマウスとDREADDテクノロジーを用いて、AAVウイルスベクター投与により、側坐核NPYニューロンの活性化を行うとオープンフィールド試験や高架式十字迷路試験で抗不安効果が認められた。また側坐核NPYニューロンをNPY-Creマウスを用いて、ヒトジフテリア毒素で破壊すると不安行動を示し、側坐核NPYは抗不安作用を持つことが示された。以上の成果をExperimental Neurology誌に発表した (ePublish, 2020)。また、昨年度は側坐核のRNA編集を抑えるとマウス飲酒行動が抑制される論文(Frontiers in Behavioral Neuroscience, 2019) と年末に側坐核の5-HT2C受容体のRNA編集がアルコール嗜好性に関与する総説をFrontiers in Neuroscience誌に発表した。
3: やや遅れている
新たに神経特異的なオートファジー活性を測定するためのレポーターシステムを発現したマウス(GFP-LC3-RFP)を作製したが、なかなか思うように成育せず妊娠繁殖に時間がかかった。そのため5系統のヘテロトランスジェニックマウスを、実際にin vivo でオートファジーを細胞レベルで可視化できるか、詳細な検討を行った。そのうち1系統のヘテロマウスが弱い蛍光ながら、オートファジーをモニターできそうなので、2020年度はこの系統のホモマウスを用いたストレスモデルのオートファジー解析を行う予定である。その間NPY-Creマウスを用いた情動モデルの検索も同時並行で行う予定である。
1.新たに作製したGFP-LC3-RFPのホモマウスに対して、まず、レポーターシステムの確認のために海馬神経細胞初代培養系を作製し、オートファジー活性化剤であるラパマイシンを投与して緑色と赤色の比率が変化するのを可視化できるのかを確認する。次にマウス脳内にラパマイシンをインジェクションして局所にオートファジーの活性化が可視化できるかを、蛍光抗体を用いた組織化学法で確認する。2.GFP-LC3-RFPマウスを用いてストレスによる脳内オートファジー活性の変化を調べる。具体的には、拘束ストレス(8時間)やフットショックストレス(0.4mA, 4回)を受けたマウスを4%パラホルムアルデヒドで固定を行い、作製した脳切片の扁桃体、側坐核、海馬、視床下部等の神経でのオートファジー活性の変化を観察する。さらに、一過的なストレス以外にも社会敗北型ストレスモデルや慢性疼痛モデルも作製し同様の解析を行う。3.抗マラリア薬メフロキンはクロロキンと同様オートファジーを抑制するが、副作用としてうつ状態など、精神異常をきたすことが知られている。経口メフロキン投与したマウスを用いて、行動解析と脳辺縁系や前頭前皮質におけるオートファジー活性を解析する。4.情動・摂食に関与する神経ペプチドNPYは生体のエネルギー状態に応じてオートファジーを起こすことが報告されている。我々はNPY特異的にCreを発現するマウスを飼育しており、NPY-CreマウスとGFP-LC3-RFPマウスを交配し、視床下部NPYニューロンを、DREADD法を用いて特異的に刺激した時にオートファジーが起こるかを脳内でモニターする。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (2件)
Experimental Neurology
巻: 327 ページ: -
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http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/anatomy1/
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