慢性痛とうつ病の併存率が高いことから両者に共通の神経基盤の存在が推測される。本研究では、痛みによる抑うつ、不安、嫌悪などの負情動生成に関わる神経回路、特に、分界条床核に着目し研究を行った。慢性痛モデル動物では、背外側分界条床核内のCRF神経情報伝達が持続的に活性化し、腹側被蓋野に投射する神経細胞に対する抑制性入力を増加させることで、ドパミン神経機能を低下させ、うつ様症状を引き起こしていることを示唆する研究成果が得られた。本研究成果は、慢性痛やストレスにより誘発されるうつ病の脳内メカニズムの一端を明らかにし、新規治療法開発につながる有用な知見を提供するものである。
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