研究課題
本研究は、治療が極めて困難とされている慢性期脊髄損傷を回復する薬物を開発することを目標とする。申請者は、脊髄損傷を改善しうる生薬の研究を進めてきた中で、骨格筋萎縮を改善しかつ軸索伸展も促す肉従蓉エキスの活性とその活性成分acteosideの知見を得ている。その成果にもとづき本研究は2つのゴールを設定する。①Acteosideが骨格筋と神経細胞に及ぼす機序を明らかにする。特にacteoside による刺激で骨格筋から分泌されることが分かったPKM2が、筋増殖や軸索伸展を促進するメカニズムを明らかにする。②肉従蓉エキスをBotanical Drug(生薬単味エキスを成分とする新効能の医薬品)として開発するため、非臨床試験、臨床試験を進める。平成29年度は、骨格筋細胞のライセートを用いたDDARTS法によって、PKM2およびperiostinが筋細胞中で直接結合する分子、すなわちシグナリングの起点分子の同定を試みた。候補分子の再現性を確認している。また、in vivoにおいてもPKM2が骨格筋から分泌されるかについては検証するため、マウス後肢骨格筋にacteosideを注射し、一定時間ごとに血漿と大腿二頭筋を採取し、その中のPKM2濃度をELISAにより測定した。その結果、acteoside注射後、大腿二頭筋内のPKM2量がまず増加し、その後血漿中内の濃度が増加する傾向を得た。さらにリコンビナントPKM2を尾静脈注射して20分後の脳内のPKM2濃度をELISAによって定量した結果、有意に脳内PKM2濃度が増加していた。これらの結果により、PKM2が血流にのって遠隔臓器にまで作用しうるmyokineとしての機能を持つことが示唆された。また、これら成果を特許として出願した。(国内出願:特願2017-201435、出願日 :平成29年10月17日、出願人 :国立大学法人富山大学)
1: 当初の計画以上に進展している
骨格筋細胞のライセートを用いたDrug Affinity Responsive Target Stability (DARTS)法によって、PKM2およびperiostinが筋細胞中で直接結合する分子、すなわちシグナリングの起点分子を同定する実験を行った。候補分子の再現性を確認しているところである。また、in vivoにおいてもPKM2が骨格筋から分泌されるかについては検証しするために、マウス後肢骨格筋にacteosideを注射し、一定時間ごとに血漿と大腿二頭筋を採取し、その中のPKM2濃度をELISAにより測定した。その結果、acteoside注射後、大腿二頭筋内のPKM2量がまず増加し、その後血漿中内の濃度が増加する傾向を得た。さらにリコンビナントPKM2を尾静脈注射して20分後の脳内のPKM2濃度をELISAによって定量した結果、有意に脳内PKM2濃度が増加していた。これらの結果により、PKM2が血流にのって遠隔臓器にまで作用しうるmyokineとしての機能を持つことが示唆された。また、これら成果を特許として出願した。(国内出願:特願2017-201435、出願日 :平成29年10月17日、出願人 :国立大学法人富山大学)
1) ActeosideおよびPKM2が筋細胞と神経細胞で直接結合する分子、すなわちシグナリングの起点分子をそれぞれ同定する。方法は、骨格筋ライセートまたは神経細胞ライセートを用いたDrug Affinity Responsive Target Stability (DARTS)法によって行う。この検討により、既知の筋細胞増殖メカニズムおよび軸索伸展メカニズムとは異なるシグナリングが提示される可能性がある。またさらにDARTS法を使って起点分子の次の分子、そのまた次の分子と、シグナリング分子を上流から順に同定する。またacteoside経口投与によって伸展する軸索の種類(介在ニューロン、下行性脊髄路、運動ニューロン、脳内ニューロン)を、免疫染色やトレーサー実験により明らかにする。2) ニクジュウヨウエキスによる、筋萎縮抑制や運動機能改善効果を評価する臨床研究の実施を前倒しで開始する。ニクジュウヨウエキスは食薬区分の食に属しており、かつ高い安全性を担保するヒトでの前例があるため食品レベルで臨床研究を進めることができる。脊髄損傷患者に対する臨床研究の前段階の臨床研究の位置づけ、同時にサルコペニアなどの筋萎縮予防薬としての一般用医薬品の出口も見据えた重要な臨床研究としての位置づけとして、運動麻痺や筋量低下の被検者をリクルートして、二重盲検法による小規模臨床研究を実施する。この試験薬に必要なニクジュウヨウエキスは製薬企業A社の協力により、また試験薬と偽薬の製造はヒトGMP適合基準を満たす製薬企業B社の協力により行う。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件) 産業財産権 (4件)
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