研究課題/領域番号 |
17H03563
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
古市 貞一 東京理科大学, 理工学部応用生物科学科, 教授 (50219094)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 有芯小胞 / シナプス小胞 / 開口放出 / オキシトシン / 社会行動 |
研究実績の概要 |
CAPS2に関する研究 神経ペプチド・オキシトシンの分泌制御とその行動への影響に関しての研究を実施した。CAPS2が,視床下部の室傍核の前後軸方向に分布するオキシトシン産生ニューロンの内,何パーセントのニューロンに発現するのか明らかにした(同時にバソプレシン産生ニューロンについても明らかにした)。CAPS2 KOマウスと野生型マウスにおける血中オキシトシン濃度をELISA法にて再測定することにより,KOマウスでは統計的に有意な血中オキシトシン濃度の減少を示すことを実証した。これにより,下垂体後葉からのオキシトシン分泌にCAPS2の機能が重要であることが示唆された。また,KOマウスは社会性の面でも野生型と比べて特異な行動パターンを示すことが明らかになった。この結果より,CAPS2依存性分泌制御機構は行動表現型において重要な役割をもつ事が明らかとなり,どの表現型にCAPS2依存性オキシトシン分泌が関与するのか,その他の制御対象である生理活性ペプチドあるいはモノアミンの可能性も含めて今後の解析が必要である。
CAPS1に関する研究 海馬におけるCAPS1依存性シナプス小胞開口放出の機能的な役割を明らかにするため,シナプス回路レベル(シナプス伝達と可塑性),および行動レベル(海馬依存的な学習記憶行動)について前脳特異的CAPS1 cKOマウスを用いて解析をした。海馬三シナプス回路において,プレシナプス放出活性とポストシナプス応答および長期増強(LTP)がDG-CA3シナプスとCA3-CA1シナプスで異なることが明らかとなった。また,文脈依存的な学習テストにおける記憶力の変化が観察された。以上の結果から,CAPS1は,海馬神経回路のDG-CA3とCA3-CA1の各シナプス伝達に重要で,しかもシナプスタイプによって特異的な意義をもち,学習記憶レベルにおいても必須であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CAPS2とCAPS1の研究のいずれも順調に進展しており,国内外の専門学会にて研究発表を行った。現在,投稿論文を準備中である。 以上のことから、本研究計画はおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
CAPS2とオキシトシンに関する研究では,オキシトシン産生ニューロン特異的なCAPS2 cKOマウスを用いた解析を行う。CAPS1の海馬シナプスにおける解析では,開口放出のプライミングステップを中心にCAPS1の機能的な役割について解析を行う。開口放出のイメージング解析とドーパミン投射先におけるCAPS2とD2DRの相互作用解析については昨年度に一定の成果があったが,2019年度で引き続き解析を進める。
|